食事のように楽しめる読書のススメ

アバタロー 著『自己肯定感を上げるOUTPUT読書術』
(クロスメディア・パブリッシング、2021年)

 これまで本要約チャンネルさんの『「読む」だけで終わりにしない読書術』や樺沢紫苑『学び効率が最大化する インプット大全』など、読書術に関する本を紹介してきましたが、今回はアバタローさんの『自己肯定感を上げるOUTPUT読書術』を読んでみました。
 本書の著者、アバタローさんは、サラリーマンとして某外資系企業の管理職を務めながら、趣味である読書の延長としてYouTubeで本の書評をする書評Youtuberです。

読書は自己肯定感を上げてくれる

 アバタローさんが本書を通じて最も伝えたいメッセージは「読書によって、人は自己肯定感を高め、人生を好転させることができる」ということです(2ページ)。アバタローさんご自身の20代半ばまでのドン底体験は壮絶です。それは、小学生時代に兄と比較され、勉強・スポーツで自信喪失。中学・高校時代にいじめられ不登校。社会人3年目に上司のパワハラに耐えられず、うつ病発症、というものです(4ページ)。しかし、学生時代から現在までの約20年間、古典から最新のビジネス書まで幅広い読書を心がけた結果、自己肯定感を回復し、仕事・キャリアの面でも成功することができたという体験から、自己肯定感に悩み苦しむ人の力になりたいという思いで書かれたのが本書です。
 アバタローさんは、読書をINPUTだけで済ませているならば、読書を自己肯定感につなげることはできないと考え、読書とOUTPUTを組み合わせることで「少しずつ、そして確実に、見える世界が変わっていくことを実感」でき(7ページ)、実際に自分の人生に変化を起こせる(6ページ)と述べています。このあたりは樺沢紫苑さんの『学びを結果に変えるアウトプット大全』でも強調されていたことでもあり、とても納得できました。

読書=食事

 本書を読んで、読書が私たちの生活に与える効果や影響についての理解がとても深まったような気がします。それはアバタローさんが用いている「読書は食事に近い行為」という比喩的な表現がとても分かりやすかったことから得られた感覚だと思います。「読書は食事に近い行為」という比喩から次のことについての理解の必要性も導かれています(19ページ)。

・栄養価の高い良質な食材(本)の選び方
・手に入れた食材(本)を美味しくいただく調理方法
・食材(本)に含まれる栄養に関する知識、そして効率よく吸収させる工夫

 また、「読書は食事に近い行為」という比喩から、読書から得られる3つの効果として①エネルギー(自分のパフォーマンスを向上させる)、②免疫(人生のリスクを最小化させる)、③栄養(長い人生を楽しみ尽くす)、という説明もあり(21ページ)、私は目からウロコが落ちる思いがしました。

OUTPUTで「長期記憶」に保存する

 さらに、「読書は食事に近い行為」であるならば、OUTPUTは筋トレやランニングなどのトレーニングにあたるというアバタローさんの指摘(48ページ)も重要だと思いました。これは本来であれば脳が記憶を残す仕組みから説明されるものです。人間の記憶は「二重貯蔵モデル」で説明できるというのが脳科学の成果です。目、鼻、口などの感覚センサーが捉えた情報を「短期記憶」として一時保存されたもののうち重要な情報だけを選りすぐって「長期記憶」に保存するという仕組みになっているため、自分の脳に「重要な情報だから消さないで」という指令を出す行為が必要で、この指令を出すためにOUTPUTというトレーニングする。これによって、食事のもっている「エネルギー」「免疫」「栄養」という3つの効果を獲得することができるというわけです。そしてOUTPUTとは食べた食材の内容を話したり、書いたりすることです。
 本書を読んで勉強になったことが他に3つあります。1つは読書とOUTPUTを継続するコツ、2つ目はOUTPUTをする際には4つの基本骨格を意識するよいこと、3つ目は選書のコツです。

読書とOUTPUTを継続するコツ

 読書を継続するコツとしては「完璧を求めないこと」「目標を小さく設定すること」「継続を意図的に途絶えさせる」ということが推奨されています。100点満点主義では途中でバテてしまいますし、「継続しなければならない」というプレッシャーも読書やOUTPUTをつまらないものにしてしまいがちです。また、本1冊丸ごとのOUTPUTでなくても1章ごとの「一口サイズ」に割ってもよいとアバタローさんは述べています(82ページ)。これはとても参考になりました。

読解し要約する

 OUTPUTの基本骨格は①準備、②読解、③要約、④発信、です(84ページ)。②の読解の部分では、著者の言いたいことを自分なりに仮説として設定しながら読んでいくことや、重要と思われる箇所に線を引きながら読む、メモを残しながら読むなどの方法が紹介されています。

投資家のような選書の方法

 選書のコツですが、①読むべき本の方向性を決め、②読むべき本のテーマを決め、③読むべき本の予算を決める、という3つのステップをふむ「投資家的選書」という方法が紹介されていて(147ページ)面白いと思いました。①のステップでは、自分の困っていること、解決したいことなどを書き出して、それらのリストをお金、人間関係、仕事上のスキル、といったテーマとしてグルーピングします(ステップ②)。そして、ステップ③として、それぞれのテーマに対する予算を決めて書店に行くという流れが示されていました。これで、自分の困り事や解決したい事に沿った選書ができるので、本を読む目的が明確になる、素晴らしい方法だと思いました。


 本書には、本の内容を「長期記憶」として吸収するための具体的な方法であるOUTPUT読書術が詳しく紹介されています。読書を食事に喩える説明がとても分かりやすくて良かったです。最後にもう1つ紹介すると、本に含まれる「三大栄養素」は「ノウハウ」と「事実」と「思想」だと書かれていました(187ページ)。そして、「ノウハウ」は良いタイミングで摂取して、すぐに行動に移して検証することが重要だとアバタローさんは言っています(188ページ)。同時に「今いらないノウハウ」であるならは後でスマホやパソコンで検索すればいいので過剰摂取は無意味だとも述べています。この指摘も本当に納得できました。

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