レポートの書き方:「問い」を「ブレイクダウン」するのがコツ
苅谷剛彦/石澤麻子 著『教え学ぶ技術――問いをいかに編集するのか』
(筑摩書房、2019年)
レポートや論文には「問い」が必要
学術的なレポートや論文を書く時には「問い」が必要です。渡邊淳子『大学生のための論文・レポートの論理的な書き方』(研究社、2015年)にもたとえば「なぜくまモンはこれほどの成功を収めることができたのだろうか」という問いを設定し、それに対する理由や根拠を提示して自分の主張をしていくと、それがレポートや論文になると述べられています。しかし、「問い」を立てるのは簡単ではないと私は感じています。そこで、「問い」を「編集する」技術について解説した本書を読んでみることにしました。
オックスフォード大学での論文指導を再現
本書の著者、刈谷剛彦さんは社会学を専門とする研究者でイギリスのオックスフォード大学の教授です。本書は、石澤麻子さんがオックスフォード大学に留学し、刈谷教授から論文執筆の指導を受けた時の様子を再現した本です。
本書のテーマは、「問いをどのように編集するのか?」ということですが、これは単純に言うと「大きな問い」を「小さな問い」に分解することです(87ページ)。「小さな問い」は「サブクエスチョン」とも言い換えることができますのでで、「大きな問い」は「メインクエスチョン」と言うことができると思います。たしかに、「小さな問い」の方が答えやすいし、そうやって小さな答えをつなぎ合わせて大きな答えに到達することができるように思いました。
5W1Hを使ってwhyをブレイクダウン
また、刈谷さんは「問い」の基本は「なぜ?」つまり英語のwhyなのだけど、「5W1Hを使ってwhyをブレイクダウンする」という方法を教えてくれています(201ページ)。「ブレイクダウン」とは「砕(くだ)く」、つまり「小さな問い」にしていくことです。who(誰が)、what(何が、どんな内容か)、how(どうやって)という「問い」に置き換えて、答えを探していくことによって物事や現象の状態を明らかにし、最終的に「なぜ?」という「問い」に答えていくという方法です。こういう方法を意識したことはありませんでした。
さらに、「whyの数を増やす」という方法も紹介されています(202ページ)。小さな「なぜ?」を組み合わせて、より大きな「なぜ?」に答えていくという方法です。これも勉強になりました。
誰に向けて書くのか?
それから、今度は「問い」に対する「答え」の書き方ですが、誰がそれを読むのかによってある程度「答え」を変える必要があると刈谷さんは考えているようです。それを刈谷さんは書く行為の「宛先」と表現しています(195ページ)。これは読む側の「文脈」が異なるということだと思います。社会学を専門とする人は社会学の「文脈」で読むのですが、医学を専門とする人は医学の「文脈」で読むので、「宛先」をある程度自分で決めて書く必要があると刈谷さんは述べています。これも重要なことだと思いました。
本書はレポートや論文の書き方を解説した本の中でも「問い」の立て方について詳しく解説した本です。「問い」は「編集」できるというのが、今まであまり意識していなかったことなので、とても新鮮で興味深く読めました。卒論のテーマ設定の時などに、とても役立つ本だと思いますので、おススメします。
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