サッカー長谷部誠選手は「監督ノート」もつけています!
長谷部誠 著『心を整える――勝利をたぐり寄せるための56の習慣』
(幻冬舎、2011年)
印税を全額寄付
東日本大震災が起きた2011年、サッカー日本代表のキャプテン、長谷部選手が本を出して話題になりました。サッカーに打ち込み、チームをまとめる長谷部選手の普段の生活や考え方が書かれているということで、サッカーファンだけでなく、組織の中で働くビジネスマンなどにも多く読まれたと思います。著者の印税が全額、東日本大震災の支援のために寄付されているということをニュースで知りました。何と素晴らしい心がけ、と驚き、その内容を知りたいと思い本書を読んでみました。
サッカー日本代表のキャプテンも
本書の著者、長谷部誠さんはプロのサッカー選手で、日本では浦和レッズでプレーし、2008年からドイツのリーグでプレーしています。日本代表にも選出され、2010年、2014年、2018年のワールドカップに出場しました。本書は2011年、長谷部選手が27歳の時に出版された本です。
心を鎮める30分
本書の題名は『心を整える』です。心を整えるために長谷部選手が生活の中に取り入れていることで、私が感心したのは彼が「心を鎮(しず)める30分」を作るようにしているということです(12ページ)。サッカーの大会中、チームメートと合宿している時でも、長谷部さんはこの30分を大切にしているそうです。他のチームメートが卓球などで盛り上がっている時でも、部屋に戻るのだそうです。そして、ベッドに横になり、目を開けたまま、息を整えながら全身の力を抜き、ボ~ッとしたり、思考を巡らせたりするのだそうです。「大事なのはザワザワとした心を少しずつ鎮静化していくこと」だと長谷部さんは述べています。他のチームメートから「ハセさん、付き合い悪いっすよ」と言われることもあるそうですが、この30分をまるで「雑念を払う」時間になっているようで、長谷部さんの人となりを象徴しているように思いました。
長谷部選手はルーティーン化が得意
本書には長谷部さんが生活に取り入れている56の習慣術が書かれています。その33~35は「脳に刻む。」とまとめられているもので、読書、読書ノート、記録、について書かれています。長谷部さんは勉強家だなと感心しました。長谷部さんは、「試合に負けて気分が沈んでいるときも、逆に試合に勝って高揚(こうよう)しているときも本を読むと心が落ち着く」と言います(118ページ)。本のジャンルは小説や哲学、人生論まで幅広いそうです。
そして、「いいなぁ」と思う文に出会っても2、3日経つと忘れてしまうので、ノートに書き写すようにしているそうです(125ページ)。本書にはそのノートからの抜き書きが紹介されていますが、私も読んだことがある本もありました。たとえば沢木耕太郎さんの『深夜特急』とか。ユーラシア大陸をバスで旅するノンフィクションですね。長谷部さんはドイツで『深夜特急』を読んで旅や人生のことを考えたのかな、と想像してしまいました。
チームマネジメント法を「監督ノート」に
そして、私が最も感心したのが、長谷部選手が「監督ノート」をつけているということです(131ページ)。長谷部選手は、引退したらサッカーの監督になりたいのだそうで、その準備の一環(いっかん)として、自分が出会った監督が、どのようにして、チームをマネージメントしているかを記録しているそうです。練習方法、遅刻したときの罰金の額、携帯電話はゲームなどの使用制限、監督とゼネラルマネージャーとの関係の作り方、スポンサーへの対応、どのようなチームスタッフを揃(そろ)えるか、ミーティングの手法、チームの盛り上げ方など、長谷部選手がとても細かな点まで目を凝(こ)らして観察している様子が分かります。長谷部選手は本当にプロだな、たくさんのことを学んでいるな、と思いました。
よい指導者になってくれそう
長谷部選手は2022年も現役選手としてドイツのリーグでプレーしています。2022年3月頃のニュースでは、38歳の長谷部選手が所属するドイツのクラブと5年の長期契約を結んだと報道されました。現役選手でありながら指導者ライセンスの取得も進めているようです。『心を整える』の出版から10年以上経ちましたが、その間、着々と選手としての実績を積み上げるとともに監督業の準備も進んでいるようです。長谷部さんの活躍に注目しつつ、読書、ノート、記録など長谷部さんが推奨(すいしょう)している方法を私も取り入れていきたいと思います。