(鎌倉殿の13人)三谷幸喜が描いた新しい「ダークな義経」像
三谷幸喜・作『鎌倉殿の13人』(第18話)
(NHK大河ドラマ、2022年)

『鎌倉殿の13人』を私はリアルタイムで視聴していなかったのですが、このたびDVDで観る機会をもつことができました。脚本家の三谷幸喜さんのおかげで、今まであまり興味のなかった鎌倉時代の人々の生活や人間模様を知ることができてうれしいです。今回は第18話「壇ノ浦で舞った男」を観た感想をリポートします。
今回のストーリーの中心は何と言っても義経(菅田将暉)。壇ノ浦で平家を滅亡させました。1180年の頼朝(大泉洋)の蜂起から5年弱かかりました。
この壇ノ浦の合戦のときに幼い安徳天皇が亡くなり、同時に三種の神器のうち宝剣が失われたということが触れられていました。義経は後白河法皇(西田敏行)にこのことを詫びますが、法皇は「(天皇は)死んだとは限らん」「(宝剣は)探せば見つかる」と言って上機嫌な様子でした。これを見て調子に乗る義経。私は義経のことはあまり知らないのですが、今まではどちらかと言えばスター扱いされ、兄・頼朝に嫉妬されて殺された悲劇のヒーローという描かれ方が多かった印象をもっていました。ですので、この『鎌倉殿の13人』での三谷幸喜さんの義経の描き方は独特だなと思いました。
義経の描かれ方としては他にも、船の漕ぎ手を矢で射させるというやり方が、当時の合戦の作法にはない、汚いやり方として描かれていました。漕ぎ手は戦闘員ではないので、狙わないというのが常識だったようです。その常識を破って勝ったことをどう評価するのか。
この点は頼朝も複雑な思いだった様子が印象に残りました。壇ノ浦の合戦のとき頼朝は鎌倉に残って奥州の藤原秀衡の進軍に備えていました。そのため総大将は義経に任せ、その義経が平家を滅亡させ、頼朝・義経の父の仇を取ることに成功しました。しかし、漕ぎ手を打つという非常識な方法をとったうえに安徳天皇を救うことはできず、宝剣も失われた。これは完全なる勝利とは言えないというのが頼朝の評価となりました。
その後、義経は鎌倉の頼朝に会いに行きますが、頼朝に拒否されて京の後白河法皇のところに戻ります。今回、頼朝と義経の決裂がはっきりしました。次回はさらに関係悪化すると予想します。