〈大学生〉卒論の書き方に応用できます!

戸田山和久 著『新版 論文の教室――レポートから卒論まで』
(NHK出版、2012年)

 渡邊淳子 著『大学生のための論文・レポートの論理的な書き方』に「パラグラフ・ライティング」という書き方が解説されていて、とても感心しました。それは個々のパラグラフを①そのパラグラフで最も大切な事柄を1文で表した主題(しゅだい)文(ぶん)(トピック・センテンス)と、②主題文の内容を詳しく述べる支持文(しじぶん)(サポート・センテンス)で構成するという書き方です。やはり、良い論文やレポートを書くにはコツがあると思います。今回はより多くの情報を求めて別の本を読んでみることにしました。

 本書の著者、戸田山和久さんは科学哲学を専門とする研究者です。本書の帯には「17万部突破のロングセラー、最強の入門書」と記(しる)されています。

本書でも「パラグラフ・ライティング」の解説が


 「パラグラフ・ライティング」については本書の第7章で詳しく解説されています。渡邊さんの本では「トピック・センテンス」と「サポート・センテンス」からパラグラフを構成するとされていましたが、戸田山さんの本書では「トピック・センテンス」と「サブ・センテンス」となっていました(190ページ)。「サポート・センテンス」か「サブ・センテンス」か、ネーミングには若干違いがあるようですね。渡邊さんは「サポート・センテンス」に「トピック・センテンス」の「理由」「根拠」を書くとしていましたが、戸田山さんは「サブ・センテンス」に「トピック・センテンス」の「根拠」「言い換え」「前後のパラグラフのつながりをつける」としています。「サポート・センテンス」か「サブ・センテンス」か、内容的にはあまり違いはないようです。

論文作成に「鉄則」あり!

 戸田山さんの本の特徴は、36個の「鉄則」が書かれているところだと思います。特に重要だと思ったのは「鉄則5」です。

 論文にはつぎの3つの柱がある。
(1)与えられた問い、あるいは自分で立てた問いに対して、
(2)1つの明確な答えを主張し、
(3)その主張を論理的に裏づけるための事実的・理論的な根拠を提示して主張を論証する。

 これが「鉄則5」です(42ページ)。ここで述べられている「主張」と「根拠」を「トピック・センテンス」と「サブ・センテンス」に入れ込みながら問いを論証するというのが論文の書き方ということだと思います。

論文を読めるようになる

 他にも重要だと思ったものとして「鉄則26」があります。戸田山さんは例文を示した後で、「鉄則26」を挙(あ)げています。

 論証は根拠と主張がこの順で出てくるとは限らない。「だから」「したがって」「なぜなら」などの語に気をつけて、どれが根拠でどれが主張かを見抜こう(149ページ)。

 この「鉄則26」は、論文や論理的な文章を読む時にも応用できると思います。つまり、「だから」「したがって」「なぜなら」などの語に気をつけながら、著者の「主張」と「根拠」を見分けることに注意して読むことが大切なのではないかと思いました。

自分にツッコミを入れると上達する!

 逆に論文・レポートを書く際に、文章の内容を充実させるコツとして「鉄則27」が大事だと思いました。

 自分の論証をより説得力のあるものにできるかどうかは、自分で自分にどれだけツッコミを入れることができるかにかかっている、自分の議論が批判されるとしたら、それはどこなのか見極めて、あらかじめ批判に答えるよう努力しよう(184ページ)。

 これが、多くの人が納得できる文章を書くコツなのだなと思いました。書いた文章を推敲(すいこう)する時には、誤字脱字を直したり言葉の使い方を修正したりするだけでなく、「自分にツッコミを入れる」ことに気を配るべきだという戸田山さんの指摘がとても重要だと思いました。


 本書は、レポートや論文など論理的な文章を書くために重要なエッセンスが解説されており、おススメします。渡邊淳子さんの『大学生のための論文・レポートの論理的な書き方』より例文が詳しく、「鉄則」としてまとめられる内容は論理的な文章を読む際にも応用できます。渡邊さんの本はシンプルで読みやすい本です。2冊とも「パラグラフ・ライティング」という技術を具体的に学んでいくのに適した本です。おススメします。

過去記事もご参照ください!

https://hon-navi.com/?p=331

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