(ジブリ)高畑勲監督がこだわった「作品の意味」と「アニメ技法」

鈴木敏夫 責任編集『スタジオジブリ物語』
(集英社、2023年)

 500ページを超える、内容盛りだくさんな本書『スタジオジブリ物語』のレビュー第13弾です。今回は高畑勲監督の「こだわり」についてです。
 高畑監督は2018年に亡くなられました。その直後に『火垂るの墓』がテレビ放送されているのを観ました。それ以前から何度も放送されていて、高畑監督の代表作だと思います。太平洋戦争末期に孤児になった兄と幼い妹の悲しくつらい話で、戦争の悲惨さと、戦時下の人々の生活、そして人間のむき出しのエゴを描いた作品だと感じます。高畑監督は、これをアニメ作品として残すことに使命感をもっていたのではないかと想像します。
 さて、高畑監督は非常にこだわりの強いお人柄だったと聞いたことがありましたが、本書では、高畑監督は2つのことへのこだわりをもっていたと書かれていました。1つはアニメの技法、もう1つは作品を作る意味、です(212ページ)。
 私の想像ですが、『火垂るの墓』を作る意味は上記のような戦争をめぐる人間の在り様を描くことだったと思います。
 アニメの技法についてですが、パラパラマンガ風のアニメーション技法を業界では「セルアニメーション」と呼ぶそうです。高畑監督が、それを超えるために挑戦したのが1999年公開の『ホーホケキョ となりの山田くん』だったそうです。技法としてはデジタル化を取り入れることに加えて、「余白をつくる」ということだったそうです(214ページ)。密度の濃い、描き込まれた画面という技法ではアニメは行き詰まるというのが高畑監督の考えだったようです。
 その「余白をつくる」という技法が2013年公開の『かぐや姫の物語』でも採られた方向性だったのではないかと私は思いました。

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