20年以上ぶりに『深夜特急』を満喫した!オーディブルで!

沢木耕太郎 著『深夜特急1香港・マカオ』
(新潮社、1994年)

 本書を最初に読んだのは1990年代です。著者・沢木耕太郎さんがユーラシア大陸を旅して書いたノンフィクションで、当時の若者は影響を受けた人が多かったと記憶しています。私自身も影響を受けて東南アジアやヨーロッパに旅に出かけたりしました。
 テレビでも猿岩石(有吉弘行さんともう1人のグループ)がヒッチハイクでイギリス・ロンドンまで行くテレビ番組(「進め!電波少年」)が放送されていました。この番組の元ネタは本書『深夜特急』です。
 このたび当時のことを振り返りながら、オーディオブックで聴いてみました。まず6分冊の1の香港・マカオ編を聴きました。最初、読んだときには注目していなかったことにも気づきがありました。
 『深夜特急』の冒頭はインドのデリーの場面から始まりますが、沢木さんはデリーに来る前に香港、マカオ、そしてタイにも立ち寄ったうえでインドのデリーに来ています。それは日本からの飛行機のチケットがデリーに行く前に2箇所立ち寄り可能なチケットだったからです。こういう航空チケットは今でもあるのでしょうか。私は詳しく知らないのですが、面白いチケットだなと思いました。

 そして、沢木さんが最初の立ち寄り先に選んだのが香港です。香港に着くといきなり、日本人の若い美人女性に声をかけられ、「香港は初めてなので不安なので、日本人に会って安心しました。良かったら空港から繁華街まで一緒に行ってくれませんか?」と言われます。海外でこんな場面に遭遇したら、あなたはどうしますか? 
 沢木さんは、何だか騙されそうと思いながら、繁華街まで同行します。女性が「香港の知り合いが迎えに来る」というので、一緒に待っていると、香港の男性が迎えに来て、女性と一緒に行ってしまいます。沢木さんは、「香港の知り合い」が男性とは思っていなかったそうで、かなりがっかりしたそうです。笑えます。
 このように『深夜特急』の面白さは、旅先での人との出会いと会話だと思います。
 沢木さんは、その香港の男性から紹介された安宿に長期滞在することになします。しかし、滞在して、だんだん分かってきたことは、どうやら、その安宿が香港の連れ込み旅館らしいということです。これも笑えました。
 しばらく香港の繁華街の観光を楽しんだ後、沢木さんは船でマカオに行きます。マカオと言えばカジノです。沢木さんはカジノゲームに興じますが、ただ賭け事をしていたのではなく、沢木さんのカジノに対する観察力には驚かされました。
 カジノで運営側(親)が儲かる仕組みとは何か? これはカジノ利用者が負ける仕組みということです。
 3つのサイコロの目の大小を当てるゲームは、3つとも同じ数字(ゾロ目)が出ると運営側(親)の勝ちというルールが、利用者を負けさせる仕組みだと沢木さんは見抜きます。
 運営側は、利用者にある程度勝たせて場を盛り上げ、利用者の賭金が大きくなったところでゾロ目を出す。沢木さんは、何時間もカジノを観察して、これで痛い目に会っている利用者を何人も見ます。
 沢木さん自身も、カジノでかなり負けるのですが、最後に、ゾロ目のタイミングを見抜いて、ゾロ目に賭けて、負けの額をだいぶ取り戻したところでカジノを切り上げます。この展開のところはとてもスリリングでした。
 語りは俳優の斎藤工さんで、沢木さんのイメージともぴったりの落ち着いたボイスでした。そして、沢木さんは情景の描写がとてもリアルで、勉強になりました。次は2のマレー半島・シンガポール編を聴いてみたいと思います。オーディブルなら月額1500円のサブスクなので追加料金がかからずお得です。

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