「結論+根拠」は明確か?会議やプレゼンのチェックポイント

伊藤羊一 著『1分で話せ2【超実践編】』
(SBクリエイティブ、2021年)

 話し方、伝え方のコツについて学ぼうと思い伊藤羊一さんの『1分で話せ』を読んでみて、結論・根拠・具体例をはっきりさせながら話すというコツが学べました。57万部のベストセラーとなった『1分で話せ』の続編である本書も読んでみました。
 本書の著者、伊藤羊一さんはヤフー・アカデミアとアカデミアいう企業内大学の学長を務め、主にプレゼンテーションの指導をされています。

プレゼン以外でも

 『1分で話せ』は、主にプレゼンで話す際のコツが紹介されていましたが、その続編である本書は、プレゼン以外の「伝える」シチュエーションにまで視野を広げてノウハウが紹介されています。ただし、その場合でも「結論+根拠+具体例」をピラミッド構造は応用できるというのが伊藤さんの考えです。伊藤さんは

「ビジネスでのコミュニケーションは、原則「ピラミッドのやりとり」だということです。

 最初に結論、そのあとに「3つの根拠」、そしてそれぞれの具体例を持ってくる。

 このピラミッドのやりとりで成立するのです。」

と述べています(本書「はじめに」)。この応用範囲は「頭の中の整理」「コミュニケーションの円滑化」「資料作成」「文章作成」にまで広げることができるというのが本書の主旨です。

ゴールを共有し結論を出す会議へ

 本書を読んで最も興味深いと思ったのは、「ピラミッドのやりとり」を会議に応用できることです。会議とは、みんなでピラミッドをつくっていく作業だという考え(152ページ)を今までもったことがありませんでした。伊藤さんは「議論の作法」を7つにまとめています。それは①テーマとゴールを確認する、②ピラミッドを伝える、③相手のピラミッドを理解する、④共通点と相違点を探す、⑤互いに歩み寄る、⑥改めて結論を出す、⑦決めたら従う、です。異なる意見・立場があっても、この方法で一定の結論を出し、結論を出したら、まずはそれに従ってやってみる。そこでうまい結果が出なければ、もう一度、みんなで仮説を持ち寄って話し合えばよい、というのが伊藤さんの考えです(52ページ)。たしかに会議で結論が出なかったり、会議に結論に従わない人がいたり、というのは問題だと思います。「会議は結果を出してなんぼ」という伊藤さんの考え(157ページ)に共感します。また、①のテーマとゴールを確認する、については『「夢を手に入れる」人がやっている時間術』のayaさんも大事だと述べていて共通していると思いました。

ピラミッドを意識して聞く

 ③の「相手のピラミッドを理解する」というのは、自分の頭の中で「相手の結論は何か?」「その根拠は何か?」「具体例は?」と問いながら、相手の話を聞くことによってできるようになると書かれています(70ページ)。これは「目からウロコ」といった感じがしました。
 そして、お互いの意見が対立したとき議長(ファシリテーター)がどう引き取るのかというのもポイントだと思いました。やり方は「多数決」「上の役職の人に預ける」というのが考えられますし、「議長の権限で方向性を決定する」というのも考えられます。伊藤さんは、議長が争点を整理することが大事だと述べています(159ページ)。また、最終的な決め方を、あらかじめルール化しておくのがよいとも述べています。私もこれらが重要だと思いました。

 
 本書では、自分の話し方だけでなく、相手の話の聞き方のコツについても生活に活かせるヒントがあると思いました。これは、たとえば「話が長い人の話をどう聞くか?」という場合に、相手の結論が分からなければ「ひょっとして、あなたの考えは○○ということですね?」と確認していくことで、「そうそう、それが言いたかった」というふうにコミュニケーションが促進されるというものです(56ページ)。あるいは、相手の結論は分かるが、根拠が分からない場合は、「あなたがそう考える理由は何ですか?」と質問する。人と話をするときには、こういうことを心がけていきたいと思いました。

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