ネット万能の時代にあえて読書に「逆張り」投資する理由
齋藤孝 著『読書する人だけがたどり着ける場所』
(SBクリエイティブ、2019年)

インターネットやスマホが普及したことで、どのような変化があったのだろうかと考えることがあります。私自身は新聞の講読をやめました。それからテレビをあまり観なくなって、YouTubeで動画を観ることが多くなりました。今回は齋藤孝さんの『読書する人だけがたどり着ける場所』を読んで、インターネットやスマホが全盛の時代の読書について考えてみました。
本書の著者、齋藤孝さんは教育学者で、『声に出して読みたい日本語』など多くの著書があります。本書を読んで私が特に勉強になったのは以下の3点です。
1. ネットで読む「消費者」
齋藤さんは、インターネット上の文章を読んだり、SNSで短いやりとりをしたりするのは情報を「消費」しているのだって、本当の意味では「読書」していないと述べています(6ページ)。そうしたネット上のやりとりは「これはない」「つまらない」「こっちは面白かった」と、より面白いものを選んではいるものの、すぐに忘れてしまって積み重ねがなく、考えは深まっていきません。「消費者」は、コンテンツにじっくり向き合うという構えになっておらず、短時間で次の情報を探そうとする傾向があります。
そうすると、作り手の側も短い時間で引きつける画像やキャッチコピーを多用するようになります。音楽でさえ、イントロ部分を省略していきなりサビから入るような作り方が好まれるようになってきているようです。
現代人のアテンション・スパン(1つのことに集中できる時間)はたった8秒で、2000年に12秒だったのが4秒も縮んでいるという研究があるそうです。
本書を読んで最も勉強になったのは、このような変化が起こっていることを指摘してもらえたことだと感じます。
2. 文字よりも映像が好まれる
私もYouTubeの視聴時間がここ数年で長くなったように感じています。これによってどんな変化があったのか。それ振り返ると、映像の伝わりやすさに思い当たります。齋藤さんは次のように述べています。
映像は、文字で説明されるより「一目瞭然」で分かる便利さがありますし、視覚・聴覚に訴える情報量が多い文、短時間でワールドに入っていけます。
ただ、それは同時に自分の頭をあまり使わなくてもいい、ということでもあります。(58ページ)
これは本当に大事な指摘だと思いました。情報化社会に生きる私たちは、映像に頼って、自分の頭をあまり使わなくなっているということです。こういう時代だからこそ、読書が必要なのではないかと感じました。
3. 本書が薦める読書法
本書には以下のような具体的な読書法が紹介されていました。
好きな文章を3つ選ぶ(79ページ)
文系の人はあえて理系の本を読む(94ページ)
2冊読めばBランク、5冊読めばAランク
読書のしかたは本当にいろいろあると思います。いろいろな読書法を試して、自分にあったものを習慣にしていくといいと思います。
私は基本的に文系なので、あえて理系の本を読むということにも挑戦していこうかなと思いました。齋藤さんは「宇宙、生命、物理など自然科学の知識を手に入れると、一気に世界が広がります」(95ページ)と述べています。