エッセイのベースになる「リアルな体験」

中谷彰宏 著『1秒で刺さる書き方』
(株式会社ユサブル、2018年)

 日頃いい文章、面白い文章が書けるといいなと思っています。少しでもコツを習得したいと思い、本書を読んでみました。
 これまで渡邊淳子さんの『大学生のための論文・レポートの論理的な書き方』や小熊英二さんの『基礎から分かる論文の書き方』などを読んできましたが、今回はレポートや学術論文など、調べて書くやり方とは違う種類の文章の書き方が解説されていました。それはエッセイ(随筆)や人生論など、自分の思いや考えを伝えるタイプの文章についてです。


 本書の著者、中谷彰宏さんは著述家で、かつては広告代理店でCMプランナーの仕事をされていたこともあります。本書で解説されている文章の書き方は、「ほかの人の文章を引用しない」という原則が述べられているように(187ページ)、レポートや学術論文の書き方とは明確に違うものです。
本書を読んで勉強になったことはたくさんありますが、その中から4つ紹介したいと思います。

1. リアルな体験があることで、感情移入できる

「本をたくさん読んでいるからといって、本を書けるようにはなりません。
私は読むのが好きだから、書けるはず」というのはムリです。
読書体験があって、それとは別に、本とは関係ないあらゆる体験があります。
それが結び合わさって大きな感情の起伏になり、リアルな映像が浮かぶのです。
図書館の中だけで暮らしていても、その人は何も思いめぐらすことはできません。」

(33ページ)

 エッセイや人生論を文章に書くには「本の中に書かれていることを使って考える」ということをしていてもダメだということだと思います。また、ある程度の年齢が上になる方が、経験が増える分、書く内容もしっかりしたものになるというふうにも思いました。中谷さんのこの指摘には大いに納得しました。

2. 反応の多さを求めない

「踏み込みのレベル、話の面白さのレベルが上がれば上がるほど、反応の数は減っていきます。
 個性を出せば出すほど、反応は減ります。
その個性にシンクロする人の数は、限られているからです。」

(102ページ)

 SNSなどで「いいね」の数などを気にしてしまう人も多いと思いますが、この中谷さんの指摘は勇気づけられる考え方だと思いました。

3. 正解より、別解を書こう

「本の書き方で大切なのは、「模範解答を書かないこと」です。
 書き手は「こんなふうにしている人もいるよ」という提示をして、読みては「そんな手もありなのか」と思って読めばいいのです。
「〇〇しなければならない」「正解はこれだ。ほかは全部間違い」ということはありません。
 正解は無限にあります。
 本は1つの正解ではなく、新たな別解を見せていくことが大切なのです。」

(171ページ)

 こういう考えは、はっとさせられました。今までの私は、正解を書くことにこだわり過ぎていたのかも知れないと思いました。たしかにエッセイや人生論では十人十色、千差万別の考えや正解があることが基本の姿だと気づきました。

4. 書くことで、書きたいことが湧いてくる。

「とりあえず書き始めることで、自分でも思いもしなかったことが出てきます。
最初から何が書けるかは、わからなくて当たり前です。
私でもわかりません。
「意外にこんなことになって面白かった」となる方が、結果として読者の心の中に一番入っていけます。
読者も読みながら、「こんな展開になるんだ」と楽しめます。
先々の工程表を決める必要はありません。
書くことは、旅行をしているのと同じです。

(222ページ)

 とりあえず書き始めると、次の書きたいことが湧いてくるというのは「なるほど」と思いました。1行もなけない状態を脱して、まず1行を書いてみると2行目が出てくるということは経験上もあったように思います。そして、「書くことは、旅行をしているのと同じ」という中谷さんの指摘が、初めて聞くような例え話で、とても面白かったです。


 本書は、エッセイや人生論などの書き方について、その道で1050冊もの本を書いてきた中谷さんの文章術が68個も解説されていて、とても参考になりました。これからブログ記事を書く時にも活かしていければと思いました。

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