SNS時代は文書作成で差がつく:読書+引用=文章力
齋藤孝 著『本は読んだらすぐアウトプットする!』
(興陽館、2019年)
インターネットが普及し、SNSの利用も当たり前になった時代だからこそ、読書から得られるものの価値が高まるのではないかと感じています。読書のしかたをいろいろと知っておきたいので本書を読んでみました。
本書の著者、齋藤孝さんは教育学者で、これまで私は『究極 読書の全技術』や『読書する人だけがたどり着ける場所』など齋藤さんの本を読んできました。多くの本を出している齋藤さんですが、本書でも新たな気づきや知らなかった読書法を知ることができました。
本書を読んで私が特に勉強になったのは以下の3点です。
1.「順番通りに読まない」という方法
本は「とりあえず最初から読む」という固定観念があります。昔、誰かから聞いたような言葉なのですが、「読書は著者との対話」という考え方からすると本は最初のページから読み進めるのがいいような気がしていましたが、齋藤さんはこれの「思い込み」が挫折のもとだと考えています(26ページ)。
本の種類によっては順番を変えて読んでも全く問題ない、ということに改めて気づかされました。小説など物語では順番通りに読むのが王道ですが、論説文やビジネス書、ハウツー本などは別です。目次を見て、そこに出ている項目、見出し、キーワードから自分にとって大事だと思える箇所から読む。しかも、一冊全体を読まなくても大事だと思える箇所だけに限定して読んでもOKだと齋藤さんは述べています。これだと読める本の幅が大きく広がると思いました。
2. 「引用ファースト」という書き方
本書を読んで改めて気づいたのは引用という技術の大切さです。オリジナルな発想が必要なのはもちろんだけれども、それプラス、昔からある考えやアイデアを吸収したうえで、それらを時代にマッチする形にしていくこと。齋藤さんは、これもまた「創りだす」、クリエイトする行為だと考えています(66ページ)。
考えてみると、「上手に引用できる」ということは、他人が述べたこと、昔からある考えやアイデアを吸収して、そこに自分の考えを付け加えていくという行為だと気づきます。
齋藤さんが行なっている「引用ファースト」という書き方が本書に紹介されています。それは、論文を書くとき、どういう論文にするかはあまり考えずに、引用する箇所をとりあえず入力していきます。すると引用の前後にコメントをつけたくなってくるそうです。すると、数個の「引用+コメント」が論文を構成する塊となってきます。あとは、その配列を考えることで論文が出来上がるというものです(86ページ)。
この方法は、引用箇所を入力するごとに「進んだ感」を得られるので、「書こうとして書けない」という焦りが少ない方法だと齋藤は述べています。
要約すると、テーマに関連する資料を集めたら、引用できそうな部分抜き書きして、コメントをつけるという方法です。会社の会議用の資料やプレゼン用の資料にも応用できそうな方法です。
3. 仕事において文章力の比重が高まっている
齋藤さんは、企業ではいろいろなコミュニケーションがメールに置き換えられる傾向が進み、文書作成の仕事が増えていると指摘しています(105ページ)。これは「仕事力=文章力」という部分が大きくなってきているということかもしれません。読書することによって、語彙力をつけたり、効果的なタイトルや見出しの付け方を学んだり、ということが効果的になってくるように思いました。
本書を読んで、SNS全盛の時代だからこそ、読書から得られるものの価値が高まるという思いがますます強くなりました。