「ゲゲゲの鬼太郎」だけじゃない! 水木しげるの幸福論が面白い!!
水木しげる 著『水木サンの幸福論』
(KADOKAWA、2004年)
水木しげるは「幸福とは何か」を考えた
子どもの頃、テレビの「ゲゲゲの鬼太郎」を観ていました。独特の魅力がありました。水木さんが戦争で片腕を失った漫画家だというのは聞いたことがあり、NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」は観ていませんでしたが、水木さん役を人気俳優の向井理さんが演じたということは知っていました。水木さんは2015年に亡くなりましたが、90歳を過ぎても元気なおじいちゃんという印象がありました。歳のとり方に幸せがにじみ出ていると思いました。水木さん死去のニュースの後、テレビ、新聞、雑誌などで追悼の番組や記事が組まれ、本書『水木サンの幸福論』を知りました。
水木しげるの「自伝」であり幸福論
本書は水木さん自身が幼少期から太平洋戦争を経て、戦後に漫画家として活躍した人生を振り返った自伝的な本です。水木さんは「何十年にもわたって世界中の幸福な人、不幸な人を観察してきた体験から見つけ出した、幸せになるための知恵を広めることを目的」として自ら「幸福観察学会」なるものを作っていたのだそうです(12ページ)。これはあまり知られていないのではないでしょうか。私も全く知りませんでした。
幸福の必要条件
水木さんは「幸福の7カ条」をまとめています。私は特に第2条「しないではいられないことをし続けなさい」、第3条「他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追求すべし」が重要ポイントだと感じます。
水木さんは、打ち込めること、没頭できること、つまり「しないではいられないこと」が幸福になるためには必要だと第2条として述べています(15ページ)。水木さん自身の場合、漫画を描くことや妖怪を探索して世界を旅することをはじめとして、いろいろな趣味や遊びに没頭し続けてきたそうです。
そして水木さんは第3条「他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追求すべし」の解説として、「我を忘れて没頭できること」であるならば、周囲の目や評判を気にするのではなく、ひたすら自分の道を「バク進あるのみ」と述べています(17ページ)。その結果、世間から「奇人変人」と呼ばれることになろうとも気にする必要など全くないというのが水木さんの考えです。そういえばテレビで時々拝見した水木さんの会心(かいしん)の笑顔は、このような水木さんなりの人生観の表れだったのだなと思いました。
「つらかったことは忘れ、楽しかったことだけを覚えている」
水木さんは戦争と貧乏が自身の人生の最大の邪魔者だったと言います(31ページ)。ただ、それでも「とても幸せな人生」だったと振り返っています。ご自身で「私は得な性分で、つらかったことは忘れ、楽しかったことだけを覚えている」と述べておられることがとても参考になります。見習いたいものです。