(鎌倉殿の13人)「うわなり打ち」の風習と義経の危うさ

三谷幸喜・作『鎌倉殿の13人』(第12話)
(NHK大河ドラマ、2022年)

 『鎌倉殿の13人』を私はリアルタイムで視聴していなかったのですが、このたびDVDで観る機会をもつことができました。脚本家の三谷幸喜さんのおかげで、今まであまり興味のなかった鎌倉時代の人々の生活や人間模様を知ることができてうれしいです。今回は第12話「亀の前事件」を観た感想をレポートします。
 今回は頼朝(大泉洋)が鎌倉に樹立した政権内部の「もめごと」を中心としてストーリーが展開しました。平家は完全には滅ぼされておらず、1192年に鎌倉幕府ができる前の段階ですが、すでに京都に対抗する坂東(関東)の政権が形を成してきていたことは知りませんでした。教科書的な知識をこの大河ドラマで補ってもらえているように感じ、うれしいです。
 重要なのは京都から大江広元(栗原英雄)が鎌倉に出仕したこと。この大江は今回の冒頭で頼朝の御家人たちに紹介された後、頼朝に鎌倉の政権の現状をチェックして意見を述べるように言われていました。
 その大江が見守る中、頼朝が房総半島から連れてきた愛人(側女・そばめ)の「亀」という女の存在を頼朝の妻・政子(小池栄子)が知るところとなります。怒った政子は京都の風習である「うわなり(後妻)打ち」を実行し、頼朝にお灸をすえることを考えつきます。「うわなり打ち」とは、ある男と先に結婚していたものが、後妻や愛人に対して嫉妬して、その者の家屋を打ち壊すことのようです。私はこの風習を初めて知りました。
 政子の指示は、頼朝が「亀」に与えた家屋を少しだけ壊せというものでしたが、それを察知した政子の弟の北条義時(小栗旬)が「亀」を救出したうえ、家屋の前に頼朝の弟の義経を立たせて、一大事になるのを防ごうという流れとなりました。ところが、義経は「うわなり打ち」の実行部隊を手伝ったうえ、さらに家屋に火をつけて全焼させてしまったのです。
 どうも前回あたりから義経の動向が度を越しているように私には思えました。義経は頼朝の異母兄弟で、他の御家人たちと自分とは違うという思いが態度に出過ぎているように思いました。
 「亀」の家屋の「うわなり打ち」の一部始終を見ていた者が梶原景時(中村獅童)によって見つけ出され、義経は頼朝に謹慎の処罰を受けることとなりました。このあたり、今後の展開にも影響しそうな不穏な展開だと思いました。
 そして、この事件の一連の流れをチェックした大江広元は頼朝に進言します。

「義時のことは決して手放さないように。義時は鎌倉殿(頼朝)に忠義を尽くします。」

 これに対し頼朝は「ワシもそう思う」と応じます。すると大江広元は「ただ、気になることが1つ」と言いかけたところで今回は終了となりました。
 次回がとても気になるラストでした。こういうところが三谷幸喜さんのうまさを感じます。私は広元が「義経を警戒せよ」というようなことを頼朝に言うのではないかと思いました。
 次回が早く観たいです。

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