(ジブリ)脚本家が何人も討ち死にした宮崎駿監督の設定変更
鈴木敏夫 責任編集『スタジオジブリ物語』
(集英社、2023年)
500ページを超える、内容盛りだくさんな本書『スタジオジブリ物語』のレビュー第4弾です。今回は宮崎駿さんの仕事ぶりが感じられた箇所をピックアップしてみました。
2010年に公開された『借りぐらしのアリエッティ』の監督は米林宏昌さんですが、宮崎さんは脚本づくりに参加していました。ジブリの鈴木敏夫さんによると、宮崎さんの物語づくりの方法は、ひとつひとつの細部を作っていくやり方です。最初に物語全体の枠組みを作って、後から細部を埋めていくような作り方ができないのが宮崎さんだということです(365ページ)。
私はこの部分を読んで、『崖の上のポニョ』の制作ドキュメンタリー番組をNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で放送した時の様子を思い出しました。確かに、ポニョを描いた数枚のイメージボードを軸にして順番に順番に物語を作っている様子でした。
さて、問題は宮崎さんが途中まで物語を作った後で、細部の設定を変更することがよくあるということ。細部の変更が物語全体の変更をともなってしまうのです。
そして、これまで何人ものシナリオライターが宮崎さんによる細部の変更に参ってしまって「討ち死に」してきたのだそうです(366ページ)。しかし、『アリエッティ』の時には、宮崎さんと共同で脚本づくりをしたシナリオライターの丹羽圭子さんが、宮崎さんの変更に一切文句を言わず、見事に脚本づくりを成功させたそうです。宮崎さんは丹羽さんにとても感謝していたそうです。
宮崎さんという人は大監督ですが、映画づくりは一人でできるものではなく、支える優秀なスタッフが必要なのだなと思いました。