やっぱり手こずる人いますよね!読書感想文

篠原明夫 著『脚本家が教える読書感想文教室』
(主婦の友社、2020年)

 自分が小中学生の頃、夏休みの読書感想文が書けなくて困った経験がありました。今考えると、「あらすじ」ばかり書いて、「感想」が書けてなかったな、とか、本の内容があまり理解できていなかったな、とか反省ばかりです。
 本書のような読書感想文の書き方の本が出ているということは、やっぱり今も読書感想文の宿題にてこずっているのではないかと思いながら読んでみました。読書感想文の宿題を抱えている小中学生や、書き方のコツを教えたいお父さん、お母さんのご参考になれば幸いです。
 本書の著者、篠原明夫さんは脚本家をされており、その経験を活かしながら読書感想文の書き方を教える教室を開催されています。すでに1000以上の子どもたちが篠原さんの教室で学び、読書感想文を書き上げたそうです(2ページ)。
 本書を読んで私が特に勉強になったのは以下の4点です。

1. 読書感想文を書くのは何のため?

 何のために読書感想文を書くのか? これをちゃんと話してあげると子どもたちのモチベーションがアップしそうです。篠原さんは、思っていること、知ってほしいことを相手に伝えられるようになるための文章トレーニングという側面を強調しています(3ページ)。そして、書くのは、先生のためでもお母さん、お父さんのためでもなく、自分のためと述べています。

2. 書く前に3つの下準備を

 いきなり原稿用紙に向かうのが行き詰まりの原因だというのは私も経験上分かっています。そこで下準備ですが、篠原さんは次の3つを指摘しています。

①なぜその本を選んだのかメモする
②読みながらフセンをはる
③一番よかったところをメモする

 私の小中学生の頃はフセンというのはメジャーな文房具ではありませんでしたが、最近は手軽に入手できていいですね。大いに活用したいものです。貼るフセンの数は3つまで、というのが篠原さん流のようです(35ページ)。たくさんはると、考えがまとめにくくなるというのが理由です。これは、とても大事なポイントだと思いました。

3. 字数に応じたフレームワーク(3パターン)

 本書には実際に感想文を書くためのフレームワーク(枠組み)が示されていてとても参考になりました。下準備①の「なぜその本を選んだのかメモする」というのも、ここで活用されます。
 400字詰め原稿用紙1枚の場合のフレームワークは以下のようになります。題名と名前の2行の他の本文は18行です。

①本を読む前の自分の体験・考え(3行)
②なぜその本を選んだのか(2行)
③あらすじ(合計5行――最初から中盤まで3行、終盤2行)
④一番いいと思ったところ(3行)
⑤どうしていいと思ったのか(2行)
⑥これからどうしたいか(3行)

 このように本文の18行を割り振ります。「長い文が書けなくても3行から5行くらいなら書けるよね!」というわけです(15ページ)。
 下準備の段階で②④のメモがありますから、文章化の段階では、③あらすじを書くこと、⑤一番いいと思った箇所はどうして、いいと思ったのかを書くこと、を付け足して、冒頭の①と末尾の⑥を書く、という作業が新たに生じます。
 ①から⑥のフレームワークがブロック(固まり)になっていて、ブロックごとにその内容を考えて文章化する、という流れになると思います。そして、①から順番に書かなくても、書きやすいブロックから書いてもいいと篠原さんは言います(15ページ)。これはよい方法だと思いました。

4. 大人はあえて「本の内容を知らない状態」で

 本書を読んで、少し意外な感じがしたのは「大人は感想文の本を読まない」という提言(110ページ)です。その本を読んでいるほうが、アドバイスしやすいように思っていたのですが、大人が内容面に口出しすることが、子どもの書きたい意欲を失わせるというのが篠原さんの考えです。「いろいろ言いたくなるのをググッとこらえて、見守ってください」と篠原さんは言います。
 また、「ママは読んでないから、わかるように説明して」などと言えば、子どもは答えながら頭の中が整理されていきます、とも述べておられます。これはとても重要だと納得しました。
 本書では、「びっくりする」→「ドッキリする」「こしがぬけるほどおどろく」など、実際の作文に使えそうな言葉の言い換えのヒントになる表も付けられています。実際に読書感想文の書き方教室を開催されている篠原さんならではの視点で、書き方の詳しい説明が書かれていて、とても勉強になる本でした。

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