トヨタとGoogleの社風はどこが違う?

マルコ社【監修】『Googleとトヨタの比べる仕事術』
(マルコ社、2021年)

 Googleもトヨタも超有名企業ですが、その社員の仕事ぶりについては想像したこともありませんでした。きっと、いろいろな工夫があるはずなので、それを学びたいと思い本書を読んでみることにしました。
 本書は出版社であるマルコ社が監修で、Googleとトヨタの企業文化に詳しいコンサルティング会社や研究者の協力のもとに執筆されています。

「人を責めるな、しくみを責めろ」というトヨタの文化

 本書では社内での仕事の進め方についてGoogleとトヨタを比較していますが、Googleはインターネット検索、トヨタは自動車製造をメインにビジネスをしている異業種の2企業なので、そもそも比較することにはあまり意味がないかもしれないと思いました。ただ、トップ企業である両社の企業文化を知ることができるのは、やはり興味深いものでした。
 トピックになっているのは、「資料作成」「情報共有」「プロジェクト進行」「社内コミュニケーション」「モチベーションアップ」「チームビルディング」「成果の出し方」「コーチング」「アウトプット」「人材育成」「業務改善」「社員評価」です。
 このうち「アウトプット」ですが、トヨタの「アウトプット」は基本的に自動車という生産物ですが、Googleの場合はネット検索をより便利にするシステム開発がメインという違いがあります。そして、トヨタの場合、品質の高い自動車を大量に生産するための「工程」の作り込みを重視しています。自動車生産の「工程」を常に見直し、ムダを省くことで、誰が作業しても品質が落ちないことに力を入れていることに感心しました(166ページ)。トヨタでは「人を責めるな、しくみを責めろ」の精神を大事にして、誰かがミスしても、それによって職場が改善されるので、ミスをしたメンバーへの感謝の気持ちさえ芽生え、団結力が増すということです(33ページ)。ここにトヨタの強さを感じました。

Googleの「20%ルール」

 本書を読んで最も勉強になったのは、Googleの「20%ルール」です。これは勤務時間の20%を自分で決めたプロジェクトにチャレンジすることが認められているということです。社員が各自の関心や熱意に基づくプロジェクトに取り組むことが、結果としてグーグル社全体の利益につながるという考えにもとづくものです。「20%ルール」によって、社員が普段使わないスキルを学んだり、所属チーム以外の同僚と働いたりすることで、社員のモチベーションを上げ、成長を促すとGoogleの経営陣は考えているようです(85ページ)。Googleという企業の強さはここにあるのではないかと思いました。

トヨタは縦、Googleは横、のコーチング文化

 その他にも、両社の「コーチング」の仕方の違いが面白かったです。トヨタは「価値観の伝承」を重視して、上司(先輩)から若手社員がさまざまなことを学ぶことを人材育成の基本としています。そして、若手社員に伝承されるべきことで、最も重要なことは、自ら知恵を出し続ける上司(先輩)の姿勢です(144ページ)。本書では、このトヨタの企業文化を「縦のコーチング」と呼んでいます。
 これに対してGoogleは上司が週1回1時間、1対1でミーティングすることが義務づけられ、部下が上司に遠慮なく意見を言えるようになる「横のコーチング」に特徴があります(133ページ)。両社が日米を代表する企業ということを反映しているような違いが見られて興味深かったです。


 本書を読んで、私はGoogleの「20%ルール」がとても参考になりました。組織内でチームを作って仕事を進める場合でも、20%程度は自分の自由な関心や発案でものごとにチャレンジできる仕組みにしておくことが長い目で見ると組織全体の発展につながるし、何よりも各自のモチベーションアップにつながるのではないかと思ったからです。

 組織に所属して働くというかたちは今後も続くと思いますが、柔軟さを合わせもった組織が今後伸びていくのではないかと思いました。本書は、組織のあり方や仕事術について学びたい人におススメです。 

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