アクティブ・ラーニング成功の条件

堀裕嗣 著『AL授業10の原理・100の原則』
(明治図書、2023年)

 学校の授業のしかたに変化が起こっているようです。先日読んだ齋藤孝さんの『新しい学力』にも書かれていましたが、グループ・ディスカッションやプレゼンテーションなどを取り入れたアクティブ・ラーニング(以下AL)をもっと重視しようという方向性が出てきているようです。
 今回はALを取り入れた授業方法について書かれた本書『AL授業10の原理・100の原則』を読んでみました。
 本書の著者、堀裕嗣(ほり・ひろつぐ)さんは北海道の中学教師で、国語を専門として教鞭をとっておられます。このブログでは過去に堀さんの『教師の仕事術』をレビューしました。
今回、『AL授業10の原理・100の原則』を読んで特に勉強になったと感じたのは以下の4点です。

1. 当事者意識とは「オーナーになること」

 AL授業では4人程度の班やグループでの話し合いの時間をとることが多いようですが、話し合いがうまくいくかどうかは、子どもたちが自分の意見をもっているかどうかにかかっていると堀さんは言います(19ページ)。自分の意見をもっているとき、他の人との交流がさかんになって、深い学びにつながっていきます。
 では、どうしたら自分の意見がもてるようになるのか。これについて堀さんはテーマについて子どもたち自身が当事者意識をもつことが鍵になると述べ、当事者意識を英語で「センス・オブ・オーナーシップ」(sense of ownership)と言うと紹介してくれています。この英語を私は知りませんでした。そうすると「オーナー」とは「持ち主」「所有者」ということでもありますから、やはり子どもたちが自分自身の問題、自分に関係の深い問題と意識できるように説明することが小集団での話し合い成功の条件になると思いました。

2. 「1人で解決が難しい」課題を扱う

 AL授業は、子どもたちが到達すべき「答え」を教師が用意する必要はない、と堀さんは述べています(23ページ)。「答え」に到達させようとしている教師の雰囲気が子どもたちに伝わると、教師の意図を探り合って、話し合いは空疎になってしまう。
 そうではなくで、「1人で解決が難しい」と感じられる課題を提示すると子どもたち同士の交流や話し合いがさかんに行なわれるようになる。これがAL授業の特徴で、一斉授業との大きな違いだということが分かりました。

3. ロールプレイのような〈設定〉で思考を促す

短歌や俳句の新人大賞の審査員になったという〈設定〉で優秀作品を審査する。校長先生になったという〈設定〉で学校の改革について話し合う。こういうロールプレイのような〈設定〉があると子どもたちの思考は深いものとなり、話し合いもさかんになると紹介されています(36ページ)。
堀さんは次のように述べています。

「〈設定〉を施すことには子どもたちの視点・視座を「公的な立場」に移行させる効果があります。(37ページ)

これはとても勉強になりました。

3. AL授業では教師の指示や説明の質が問われる

 一斉授業では教師の説明が長く続き、主導権が教師にある状態が続きますが、AL授業は小集団での話し合いなど、子どもたちに主導権が預けられる時間が増えます。そうすると、教師の指示や説明が短い時間でしっかりと行われる必要性が高くなります。指示や説明が明快で、子どもたちにしっかり伝わるかどうかが問われることになると堀さんは指摘しています(43ページ)。これも重要な点だと思いました。
 本書ではアクティブ・ラーニングのうち、班や小集団での話し合い、つまりグループ・ディスカッションを成功させるヒントがぎっしり詰まっていると感じました。

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