(ジブリ)『ポニョ』の仮タイトルは『崖の下の宗介』だった!
鈴木敏夫 責任編集『スタジオジブリ物語』
(集英社、2023年)
500ページを超える、内容盛りだくさんな本書『スタジオジブリ物語』のレビュー第12弾です。今回は『崖の上のポニョ』の最初の題名についてです。
2008年に公開された『崖の上のポニョ』は、そのメイキング映像がNHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル仕事の流儀」として放送されました。私はこの「プロフェッショナル――」という番組自体も好きで視聴していたのですが、宮崎監督の回はとても面白くてDVDも買ってしまったほどです。宮崎監督が東京のスタジオジブリ近くのアトリエで絵を書く様子、朝コーヒーを淹れて飲む様子、そして瀬戸内海の鞆の浦の民家で自炊しながら映画の構想を練る様子などが放送されました。
さて、本書を読んで、『崖の上のポニョ』は、もともとは別の題名だったことが分かりました。それは何と『崖の下の宗介』だったのだそうです(344ページ)。思わず吹き出してしまいそうです。やっぱり「崖の下」よりは「崖の上のほうがいいな」 と。
宮崎監督が鞆の浦の民家で映画の構想を練っているとき、近くの古本屋で夏目漱石の全集を見つけて、『門』という小説を読んだのだそうです。この小説の主人公は野中宗助。彼が妻と弟と3人で崖の下の家に住んでいる設定でした。私も読んだことがありました。
それで『崖の下の宗介』。この構想を鈴木さんが聞いて、「下よりは上のほうがいい」ということで『崖の上の宗介』という仮タイトルでしばらくは制作が進んだそうです。
宮崎監督が夏目漱石からも影響を受けていたとは少し意外でした。そして、「宗介」ではちょっと地味だな、渋すぎるな。だから「ポニョ」が最終的なタイトルに入ってヒットにつながったのだなと思いました。