脳とメンタルに運動が効く!

アンデシュ・ハンセン 著『最強脳』
(新潮社、2021年)

 アンデシュ・ハンセンさんの本は以前に『ストレス脳』を読んだことがあり、脳科学の成果を分かりやすく解説してくれていて面白かったので、今回は本書『最強脳』を読んでみました。
 本書の著者アンデシュ・ハンセンさんはスウェーデンの精神科医です。日本で2021年に発売された『スマホ脳』がベストセラーになりましたが、私はまだ読んでいません。
 今回読んだ『最強脳』は、精神科医で脳科学にも詳しいハンセンさんが、脳の仕組みを中心として幸福感、記憶力、集中力について解説してくれた本です。

誰でもできる運動の3つのレベル

 本書全体を通じて、脳をしっかりと働かせるためには運動(身体活動)がとてもよいということが強調されています。これは『ストレス脳』にも書かれていましたが、『ストレス脳』では「15分間のジョギングや1時間の散歩でうつになるリスクが26%減る」という研究が紹介されていて「1時間の散歩はやりづらいな」と感じました。しかし、本書『最強脳』では運動のやり方が3つのレベルに分けて紹介されて、①生活の中で、今よりもう少し運動する、②週に2、3回、30分以上の運動をする、③苦しいと思い始めてから、あと少し、しっかり息が上がるように運動する、という目安が示されていています(195ページ)。このうちの①、②程度ならばできそうだと思いました。

ドーパミンの解説が面白かった

 本書を読んで私が特に面白かったのは脳内物質ドーパミンについての解説です。ドーパミン量が増えると人間は幸せな気分になり、満足を感じるように出来ているとハンセンさんは述べ、例として、おいしい物を食べるとドーパミンが出るのは、人間にとって生死を分けるような大切なことだからと付け加えています。同様に、友達と会うとドーパミンが出るのは、他の人を仲良くできるということも生死を分けるような大切なことだとハンセンさんは述べ、人類の歴史から脳の仕組みを説明しています(26ページ)。約1万年前の狩猟採集生活の時代から人間の脳の仕組みはあまり変化していないということをハンセンは強調しています(75ページ)。とても面白い説明だと思いました。

「いいね!」という「ごほうび」でスマホが手放せなくなる

 人類は、狩猟採集生活から農耕生活、産業革命を経て今やデジタル革命を経験していますが、生活が大きく変化するにつれて、人間は体を動かさなくなった(76ページ)。しかし、脳の仕組みは狩猟採集生活の時代のまま。そんな現代だからこそ運動(身体活動)が必要というハンセンさんの解説はとても重要だと思いました。
 そして、デジタル革命を経た今、スマホを手にした私たちはSNSで「いいね!」がつくたびに、ドーパミンが出て、脳に「ごほうび」がもらえるようになっていることが問題です。「私たちの脳は、スマホのような技術の進化についていけていない」とハンセンさんは指摘しています(28ページ)。この点も、とても共感できました。私はまだ読んでいませんが、もしかしたらハンセンさんの『スマホ脳』にも、これと同じような解説が書かれているのかもしれないなと思いました。

記憶の2層モデル

 もう一つ私が気になったには記憶に関するハンセンさんの説明です。ハンセンさんは人間の記憶を作業記憶(短期記憶)と長期記憶という2層モデルで記憶を説明しています。このことは和田秀樹さんの『記憶法大全』にも書かれていたので私も知っていました。また、作業記憶(短期記憶)は脳の海馬が中心になっていることも聞いたことがありましたが、長期記憶については、私は側頭葉が中心だと何となく思っていたのですが、ハンセンの本書では「長期記憶は大脳皮質のあちこちに散らばっている」と述べています(168ページ)。どうやら間違った印象をもっていたようなので改めたいと思いました。


 本書を読んで、運動が脳や体にとても大切だということストレートに伝わってきました。生活の中で、今より少しでも運動の量を増やしていくことで充分だということも分かりました。ハードルはそれほど高くないので、私もやってみようと思いました。

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