サッカー本田圭佑選手も日記で体調チェック
小林弘幸 著『「3行日記」を書くと、なぜ健康になれるのか?』
(アスコム、2014年)
日記を書くといろいろな効果が得られるということについては中島輝さんの『自己肯定感ノート』、樺沢紫苑さんの『アウトプット大全』、冨山真由さんの『定時で帰る女性の仕事ルールと時間術』などに書かれていました。私も2022年の1年にわたって日記を書く習慣を継続することができて1日の振り返りができるようになり、就寝前を落ち着いて過ごせるようになったと感じています。日記の効果についてさらに知りたいと思い、本書を読んでみました。
本書の著者・小林弘幸さんは医師で、特に自律神経の研究をご専門にされています。日本体育協会公認スポーツドクターでもあります。
本書を読んで特に勉強になったのは次の3つです。
1. トップ・アスリートも日記をつけている!
本書が出版されたのは2014年ですが、この時点でトップ・アスリートと認められ、現在でも「レジェンド」的な選手とされているサッカーの本田圭佑選手や中村俊輔選手は日記をつけているそうです(25ページ)。本田選手も中村選手も、とても有名な選手ですが、日記をつけていることを私は知りませんでした。
日記の内容ですが、本田選手の場合、1日の練習メニュー、体重、食べたメニュー、トイレの回数などがそうです(27ページ)。体調の変化に細やかに気を配っており、また、この日記を小6の時から1日も欠かしていないそうですので、「さすが、プロだな」と思いました。
著者の小林さんご自身は、10年以上にわたって日記を書いているそうですが、日記を「日常の小さなストレスを放っておかない“自己検診ツール”」と表現しています(26ページ)。つまり、日記は「何となく感じる不調感」や「脳裏をかすめる小さな不安」をしっかりと意識し、チェックするツールとして活用できるということです。
2. 日記で自律神経を「その気」にさせる!
小林さんのご専門である自律神経についての説明が分かりやすかったです。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、前者は車でいうとアクセル、後者はブレーキです(40ページ)。「交感神経」が優位になると心拍数や血圧が上がり、呼吸が速くなり、血管が収縮する。また、目の前のことに集中して取り組めるように、ノルアドレナリンやアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。
逆に「副交感神経」が優位になると、心拍数や血圧は下がり、呼吸はゆっくりになって、血管は適度に拡張してリラックス・モードになります。そして、アクセルとブレーキ、両方のバランスがとれていることが健康にとって重要です。
このような自律神経に、日記がどう関係するのか? この点が私の疑問でしたが、小林さんの答えは、「日記には副交感神経の働きを高める効果がある」というものです(48ページ)。特に、日記を書くと「呼吸が整う」ということが重要だと小林さんは言います(89ページ)。日記に向かって、ゆっくり、ていねいに文字を書き落とす行為が呼吸を整え→体内の酸素が増え→、血管が拡張し→血流が良くなる→リラックス・モードになるという流れが起こるそうです(92ページ)。これは小林さんの研究室の「ドップラー」という血流測定機器でも確認できるそうです。
このような日記の効果について、小林さんは次のように強調しています。
いわば、自律神経が“その気”になって、自分の目指すほうへ勝手に進んでいく「自動操縦モード」が機能し始めるわけです。(130ページ)
私は辞書で「自律神経」という言葉を調べた時、「意志とは無関係に、血管・内蔵・汗腺などを調整する神経」という説明があったので、自律神経を自分でコントロールすることはできないと思っていましたが、本書を読んだことで、その考えは変わりました。日記というツールを使うことで自律神経をコントロールすることができるのだと初めて知りました。これが本書を読んだ最大の気付きでした。
3. ワープロより手書きで
小林さんは、日記はパソコンのワープロよりも手書きで書くことを推奨しています(80ページ)。ワープロは手早く書けて便利ですが、色紙、短冊に書く目標、神社の絵馬に書く願い事と同じように、手書きで書くと意識に強烈にインプットされますので、自律神経を「その気」にさせる効果が高くなる、というのが小林さんの考えです。本書を読んで、私も今年から手書きの日記に移行しようと思いました。
本書は、自律神経に効く日記の効果が詳しく解説されており、とても勉強になりました。就寝前に3行でいいでの日記を書いて呼吸を整えてから寝る習慣が大事だということが分かりました。
小林さんは、自分を変えたり成長させたりしたならば、逆に「安定」が大事で、自律神経を整えて心身を「安定」させるからこそ、変化や成長が可能になると言います(176ページ)。本田選手や中村選手などトップ・アスリートも、そうやって成長を続けているのだと思いました。