内定したら読もう!社会人1年目で仕事の基盤を作るコツとは?

岩瀬大輔 著『入社1年目の教科書』
(ダイヤモンド社、2011年)

 このブログでは大学生だけでなく社会人の学びに役立つ本を紹介しています。本書『入社1年目の教科書』は、社会人1年生の若者を対象として何をどう学んでいけばよいのかを詳しく解説した本です。題名に惹かれて読んでみました。
 本書の著者・岩瀬大輔さんはライフネット生命保険株式会社の創業者で、大学在学中に司法試験にも合格されているそうです。現在(2023年)はライフネットを退社され、他の金融関係のお仕事で幅広く活躍されているようです。
 本書には、社会人1年生が気をつけるべき基本原則に続いて、取り組むべき事が50個、具体的に説明されています。私が特に勉強になったのは以下の6つです。

1. 50点でよいので早く出せ

 これは基本原則の1つなのですが、岩瀬さんは「50点の仕事に赤ペンを入れてもらい、アップグレードしていけばいい」と述べています(6ページ)。自分でできる範囲を仕上げたら、できるだけ早く上司に見てもらうほうが、締め切り直前まで自分1人で完成に近づけようとするよりもいいものができる、というのが岩瀬さんの考えです。
 私は樺沢紫苑さんの『アウトプット大全』の一節を思い出しました。それは「30点の完成品」を、時間をかけて磨き上げるというものです。岩瀬さんの考えでは、50点分を目安として自分ができることをやって早めに上司に見てもらい、アップグレードを図るというものですが、樺沢さんは、まずは30点のものでいいからラフな完成品を作り、その後にブラッシュアップする。ラフな完成品を作ることと、ブラッシュアップの比率は5 : 5と樺沢さんは述べていますので、やはり岩瀬さんと樺沢さんの考えはとても類似していると思いました。

2. 情報は原典に当たれ

 「グラフに騙されるな」という人もいます。情報は見せ方を変えられたり、印象操作されたり、編集されたりしている可能性があります。そこで岩瀬さんは「情報は原典に当たれ」と言います(84ページ)。原典に辿り着く方法は、①まずはインターネットの検索、②関連する資料の参考文献、③その参考文献の参考文献と辿っていくことで、本当の原典を見つけることができます。「過去に情報収集した人のリストを使うことです。ゼロから始めるのは、手間と時間がかかります」と岩瀬さんは述べています(86ページ)。これは、読書猿さんの『独学大全』で紹介されていた「文献たぐりよせ」という技法と共通する考えだと私は思いました。読書猿さんも「ゼロから始めようとするな」と述べています。

3. 本を読んだら3行でもいいので感想文を書け

 本の読み方について岩瀬さんは、速読や濫読ではなく、気に入った本をじっくりと何度も読むことを推奨しています(95ページ)。そして、次のように述べています。

「たとえじっくり読める本に出合ったとしても、読みっぱなしでは意味がありません。たった、3行でも構いませんから、必ず感想文を書いてください。
これは仕事の復習と同じ考え方です。その本から何を学んだのか。自分にとってどういう意味があるのか。思い浮かんだ考えをアウトプットして、自分のストックにしてください。」(97ページ)

このような読書感想文をアウトプットして、ストック(蓄積)していくということは樺沢紫苑さんも齋藤孝も推奨している方法です。社会人の学びの方法として、もはや常識といってもいいのかもしれないと思いました。

4. 焦点を絞って勉強し、役に立つインプットを心掛けよ

 岩瀬さんは「世界史ではなく、塩の歴史を勉強せよ」と述べています(114ページ)。これは、一般的な教養を獲得しようとすることとは一線を画して、仕事の完成度を高めるために必要な情報に絞り込んだうえでインプットすることが大切だという意味です。社会人は勉強に使える時間が限られているので、こういう勉強のしかたが必要になると納得しました。

5. 社会人の勉強はアウトプットがゴール

 本を読むとき「自分たちならどう行動すべきか」「自分たちの事業だったら、どう判断するべきか」という視点をもって読む。それは著者との対話というよりも「自分から乗り込んで宝探しをするように読んでいく」ことだと岩瀬さんは述べています(119ページ)。そうすると、その読書はインプットを目的とするはなくアウトプットを目的とすることになるというのが岩瀬さんの考えです。
これは齋藤孝さんが『究極 読書の全技術』で述べている「役に立つ読書」と「快楽としての読書」の区別のうち、「役に立つ読書」に徹底的にこだわった読書法だと思いました。

6. 貯蓄をするとお金のリテラシーが身につく

 貯金をしてある程度の金額が貯まると、それを資産と認識するようになる。そうするとその資産をどのように活用するのか、つまり、引き続き貯蓄するのか、株を買うのか、車を購入するのか、といったことを考えるようになる、と岩瀬さんは述べています(208ページ)。
 貯蓄して資産を手にすることによって、投資などお金のリテラシーが身についていきます。消費ばかりしているのでは、お金のリテラシーは身についていかないという意味だと思います。とても重要なことだと私も思います。
 本書の2011年で、この年には東日本大震災が起こり、その後2020年からはコロナ禍に見舞われましたが、本書に書かれていることは震災後、コロナ禍後の社会人1年生にも当てはまる大事なことが書かれていると感じました。

Follow me!