「ウルトラマンは裸か?着衣か?」――それは重大な問題だ!

柳田理科雄 著『金の空想科学読本』
(KADOKAWA、2011年)

 ウルトラマンやガンダムなどテレビのヒーローものに夢中になった時期がありました。いや、今でもけっこう好きです。30年以上前に放送されたヒーローものの番組でDVDになっているものがあればレンタルで借りて観ることもあります。そんな私ですが、本屋で本書『金の空想科学読本』を見かけて中身をパラパラ読んでみると、ウルトラマンなどの設定について真面目にツッコミを入れていて思わず笑ってしまいました。
 本書の著者、柳田理科雄さんは学習塾の経営などをした経験のあるライターさんで、1996年以降『空想科学読本』のシリーズを執筆しています。「理科雄(りかお)」さんは本名だそうです。

設定にツッコミを入れると

 本書は、2011年に15周年を迎えた『空想科学読本』の記事の中から、読者の投票によって選ばれた25本の記事が掲載されています。第1位は、「北斗の拳」の「『お前はすでに死んでいる』って、どんな状態?」で、柳田さんは「科学的にも国語的にも『もうすぐ死ぬ』が正しいような気が……」など、真面目にツッコミを入れています(13ページ)。
 上位に並んだ記事は「ハイジの大ブランコは、ジェットコースターより怖い!」(第2位)、「キノコを食べて巨大化するマリオ。そんなこと可能?」(第6位)、「サザエさんが飛び込む山小屋は、なぜ伸び縮みするのか?」(第15位)、「ドラえもんのタケコプターで、本当に空が飛べるのか?」(第21位)、などです。日本のテレビ番組やゲームを代表するような有名なものばかりで、読者からの反響も大きな記事だったようです。本書は、それらの番組やゲームのどこか不思議な場面や設定にツッコミを入れ、真面目に考察を展開しています。

個人的に1位は、やはりウルトラマン!

 私が最も気に入った記事は第10位にランクインした「ウルトラマンは裸か? それとも何か服を着ているの?」という記事です。柳田さんは「ウルトラマンは裸か? それとも服を着ているのか? これはウルトラマンがブラウン管に初登場した1966年以降、多くの人々の脳裏に一度は浮かんだ疑問だろう」と述べていますが(106ページ)、私の脳裏(のうり)には一度も浮かんだことはありませんでした。

ウルトラの星から裸で!?


 また、柳田さんは「300万光年も離れた星からやってきたウルトラマンが素っ裸で地球をウロウロしているというのは、きわめて考えづらい」とも言います(106ページ)。そして、柳田さんは「裸であるとしたら何が困るのか、服を着ているなら何が変なのかを考えていくしかないだろう」と考察を進めます。裸であるとしたら、「彼らは、素っ裸で宇宙を飛んできて、異星の生物とはいえ公衆の面前で、全裸で暴れ回っていることになる。地球人には、とうてい理解しかねる行為」です(107ページ)。
 そして、帰ってきたウルトラマンは、左の手首に、ウルトラセブンからもらったウルトラブレスレットをつけ、ウルトラマンタロウは、ウルトラの母からもらったキングブレスレットをはめています。柳田さんは「もしウルトラの人々が裸だとするならば、この2名は全裸に腕輪だけをしていることになる。ちょっと危険な香りの漂うファッションだ」と指摘しています(108ページ)。
 そして、ウルトラセブンの頭のトサカ「アイスラッガー」は怪獣を切り裂いてブーメランのように戻ってくる武器ですが、「素っ裸で頭に包丁を載せているのも同然。かなりの勢いでアブナいんじゃないか、この男」とも述べています(108ページ)。
 さらに、ウルトラマンキングはマントをしていますが、素っ裸にマントとは!!

ウルトラマンの素顔は?

 このようにウルトラマンたちが裸だというのは不都合がありますので、服を着ていると考えれば円満に解決するように思われます。が、柳田さんは「服である以上、それは当然、着脱可能であろう」(115ページ)と考察を進めてしまいます。「彼らが服を脱いだとき、われわれの知らない真実の肉体が現れることになる」。そして「ウルトラマンの頭部と胴体の間に境目は確認できないから、頭までもヘルメットで覆われているようにも思える。それを脱いだときに現れるのは、いったいどんな顔なの!?」と疑問を呈(てい)しています。たしかに、ウルトラマンの真の顔というのは想像したくないような気がします。

折衷案から結論へ

 この記事の素晴らしいところは、「裸か、服を着ているのか」について考察し、どちらも変なところがあることを指摘したうえで、柳田さんなりの折衷(せっちゅう)案が示されているところだと思います。その折衷案とはウルトラマンの銀色の部分は地肌、赤い部分は服、というものです(119ページ)。そう考えるとウルトラマンもセブンも、股間はパンツで覆われていて一安心(ひとあんしん)です。そして、顔は素顔。セブンはほぼ全身を赤い服に包んでいる。タロウも赤い部分が多いので、かなりの厚着をしている。一件落着か……と思いきや、ウルトラマンキングとウルトラマンエースは股間が銀色です。大変だ! 柳田さんは、キングの姿を『ウルトラ兄弟大百科』(小学館)で確認し、銀色のパンツをはいているように見える、としていますが、ウルトラマンエースだけは「あえて股間を露出している」ように見えると述べています(119ページ)。
 そして、この記事ではウルトラ一族はパンツ一丁に近い状態で宇宙の平和を守っているという結論になっています。
 ウルトラマンなどのテレビ番組やSFものの映画の設定を科学的な視点で真面目に考察していくと、こんなに楽しい発見があるのだなというのが本書を読んだ感想です。今回は、ウルトラマンに関する記事を取りあげましたが、本書には他にも面白い記事がたくさん掲載されています。みなさまにも是非おススメします。

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