インプット過多の解消を目指すアイデア集

齋藤孝 著『アウトプットする力』
(ダイヤモンド社、2020年)

 アウトプットついては樺沢紫苑さんの『アウトプット大全』を読んで、話したり書いたりするアウトプットの大切さを知りました。以前『声に出して読みたい日本語』がベストセラーになった齋藤孝さんがアウトプットについてどのように述べておられるかを知りたくて本書を読んでみました。
本書の著者、齋藤孝さんは明治大学文学部の教授で教育学やコミュニケーションを専門とされている研究者です。

 本書では「話す」「書く」「発信する」ということをアウトプットの中身として、具体的な方法が解説されています。齋藤さんは今の日本人には「インプット過多でアウトプット不足」というタイプの人が多いと感じているそうです(14ページ)。本やネットの情報をインプットとして十分な知識があるのに、話すことや書くことが苦手というタイプが多い理由は、日本人が遠慮しがちであることや、「間違えたくない」という気持ちが強いこともありますが、一番大きいには「アウトプットの心構えができていない」というのが大きいと齋藤さんは見ています。小学生から大学生になるまで、アウトプットを求められるのはテストや入試の面接のときぐらいで、この限られた場面で結果を出せばとりあえず評価されるという状況が、アウトプットの心構えをつくれていない原因だ(15ページ)という齋藤さんの分析は、「なるほど」と思いました。
 本書では、アウトプットの仕方についての齋藤さんのアイデアがいろいろと紹介されていて、とても参考になりました。その中からいくつかを紹介したいと思います。

1. 「夏目漱石作品の好きなセリフベスト10」を選ぶ(58ページ)

これは本当に面白そうだと思いました。私も夏目漱石は好きなので、やってみたいと思いましたし、他の作家、たとえば東野圭吾さんの作品、とか別の作家さんの作品の中から好きなセリフベスト10を選ぶというのも面白そうだと思いました。こういうことをやっていくと、いいアウトプットの練習になると思いました。

2. スピーチは締めの一文を決めてから内容を考える(85ページ)

 この方法をとると、ゴールに向けて逆算で内容を考えることができるようになり、文章を組み立てやすくなると齋藤さんは述べています。やってみたいと思いました。

3. よい文章を3つだけ選んで書評を書く(118ページ)

 書評や読書感想文は、本の中から3つの文章を選んで、その説明を補足するイメージで書くと、その本全体の魅力を表現することができると齋藤さんは述べています。また、なぜその文章を選んだのかを説明するには、前提となる状況や知識、登場人物などを説明する必要があり、その説明の過程で、その本の魅力について表現できるとも述べています。前半、中盤、後半から1つずつセレクトするとバランスがいいそうです。これも素晴らしいテクニックだと思いました。
 

本書はアウトプットのコツが85個に分けて解説されています。本を読んで、たった1%でも自分らしさを「まぶして」アウトプットすることで、世の中の表現は成り立っていると齋藤さんは述べています(106ページ)。そう考えると気が楽になって、たくさん読んで、どんどんアウトプットする心構えになれそうな気がしました。

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