(コーチングと脳科学)質問は1回に1つにしてください
合力知工・市丸邦博 著『サスティナブル・コーチング』
(同友館、2021年)

スポーツ選手や組織の部下を育てる方法としてコーチングが有名ですが、その具体的な方法を知るために本書を読んでみました。
今回は、コーチングと相性がいい脳科学についてです。
この点について、最も基本的で大事なのは、「質問は1回に1つ」ということだと思いました。脳科学的にみると、脳は複数のタスクをこなすよりも1つのタスクをこなすほうが得意なので、複数の質問は選手や部下に負担をかけることになるからです(72ページ)。ですので、コーチが質問する場合は1回に1つに絞るのがよいということになります。
私は2つ、3つの質問を一気にするほうが「頭が良さそう」だと感じていましたが、これは脳科学的には間違いだと分かりました。
次に重要だと感じたのは、「他者を見る目は厳しくなりがち」だということです(77ページ)。本書では、脳の「熟考システム」と「自動システム」という2つの仕組みで説明されていました。脳は、この2つの仕組みの組み合わせで補完し合って作動しますが、自分のことではなく他人のことになると、とたんに「自動システム」が優位に働いて、その人が疲れているとか寝不足といったことに対する意識を遮断して、無能で怠惰だから失敗したという決めつける傾向があるということが解説されています。
コーチの立場としては、この2つの点(①「質問は1回に1つ」、②「他者を見る目は厳しくなりがち」)には十分に注意する必要があると思いました。