【ブラジルに初勝利!おめでとうございます!】日本サッカーの”頭脳”を覗き見!『岡田メソッド』に学ぶ「組織論」

岡田武史 著『岡田メソッド』
(英治出版、2019年)

 【サッカー日本代表、ブラジルに初勝利! おめでとうございます!】勝利を信じて、何年も何年も努力し続けてきたサッカー関係者のみなさま、よいものも見せてくれてありがとうございます! サッカー王国ブラジルには、「マイアミの奇跡」というオリンピックでの勝利を除くと、A代表では歴史上初勝利ですね! すばらしい! やればできる!

 今日は1冊、サッカー関係の本をご紹介します。本書はサッカー日本代表の監督だった岡田武史さんが、自身のサッカー指導法を体系的に論じた本です。サッカー日本代表が初めてワールドカップに出場した1998年フランス大会と、アウェイでベスト16に入った2010年南アフリカ大会の監督で、日本サッカー界に多大な貢献をされてきた方だと思います。
 私はサッカーの素人ですが、試合観戦は好きです。日本代表が世界の強豪国と戦い、勝ってほしいと常々思っています。現在、岡田さんはFC今治の代表をされているということを聞いていました。その岡田さんのチーム作りのノウハウを述べているのが本書です。本のタイトルは『岡田メソッド:自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系』です。サッカー関係者の方にはすでに読まれているのかもしれませんが、私のような「観る専門」のような者にも読み応えがある本でした。以下、本書を読んで大事だと感じた箇所を3つご紹介します。

1. 「プレーの原則」を整理し、名前をつける

 1つ目。本書はサッカーの基本書です。しかし、選手個人のテクニックとチーム戦術に焦点をあてるのではなく、そのバックグラウンドとなる「プレーの原則」に焦点をあてています。この点が本書の大きな特徴です。「プレーの原則」をあまり学ばずに、個人のテクニックとチーム戦術を教えられているのが日本のサッカー選手の現状だと岡田さんは感じています。
 では、「プレーの原則」とは何か。本書では1)共通原則、2)一般原則、3)個人とグループの原則、4)専門原則という4つに分けて詳しく解説されています。たとえば、1)共通原則では、「サッカーの4局面」として①攻撃、②攻撃から守備へ、③守備、④守備から攻撃へ、という4局面でサッカーの試合を捉えること。そしてピッチを自陣、中盤、敵陣の3つのゾーン、中央から左右のサイドを5つに分けて、3ゾーン、5レーンで分けて捉えること。また、攻撃、守備をそれぞれ4つの段階に分けて捉えることが述べられています。
よくFW、MF、DFという3つの役割で4-3-3や3-4-3などのシステムが語られているのを聞いたことがありましたが、本書の3ゾーン、5レーン、攻撃・守備の4段階という捉え方を初めて知りました。
 そして、岡田さんによると、このようにきちんと分けて、名称をつけておくことによって、選手と指導するコーチ・監督のコミュニケーションがスムーズになるという効果が期待できるということです。

2. Good/Bad/Next

 本書からの気付きの2つ目として、岡田さんが提唱しているフィードバック方法があります。それは、Good/Bad/Nextという方法です。岡田さんは、練習や試合を選手同士で話し合わせるのですが、その時に、Good/Bad/Nextを記入できる「振り返りシート」を活用しているそうです。Goodとは、今後も継続、発展させていきたいこと、Badは改善すべきこと、NextはGood/Badから学んで今後行うべき挑戦事項です。監督・コーチも、その日の練習や試合を年間のトレーニング計画と照らし合わせながらGood/Bad/Nextを洗い出していきます。この方法は、サッカーチームだけでなく、企業などいろいろな組織でも応用できるのではないかと思いました。

3. コーチングのコツ

 本書からの気付きの3つ目は、コーチングのコツです。岡田さんは「原則から導く」ことをコーチングの基本として、1)から4)の原則を選手にきちんと理解させ、それができるように導くことを目指します。日本の武道・芸道でよく使われている「守破離」という言葉を岡田さんはサッカーに使っています。「守」とは基本のことですが、その基本とはまさに、1)から4)の原則です。これを9歳から16歳までに教えたうえで、その後の年代で「破」「離」という応用・発展段階を目指します。
 さらに、コーチングのコツとして「選手、子どもたちをリスペクトする」ということが書かれており、すばらしいと思いました。相手を尊重せず、押し付けるような伝え方が、日本のスポーツ指導の悪いところなのではないかと感じます。高校野球もそうです。
コーチは、選手の存在を認める。ただし、これは選手にお世辞を言ったり、媚を売ったりすることではないと岡田さんは述べています。とても印象に残った言葉を引用します。

「私のことが大嫌いでも、コノヤローと思っていても、私に向かってくるやつは絶対に見捨てない。1試合も使わないかもしれないが、1年後にうまくしてやる自信はある。でも、ふてくされて向かってこないやつの相手は、絶対にしない」

 この言葉から、監督として選手と向き合っている岡田さんの姿が目に浮かぶように思いました。
 日本のサッカーの基本は、ヨーロッパやブラジルをはじめととして海外からいろいろな方法が紹介され、取り入れられてきました。それらをいったん整理して、日本のサッカーのモデルをまとめようとしたのが本書を書いた岡田さんのねらいです。岡田さんは、監督として大きな実績がありますが、本書では日本サッカーの原則を整理するという大きな功績を残されたと思います。多くのサッカー関係者の方が本書を「たたき台」として日本のサッカーをもう一段階上に引き上げてほしいと思います。
 これからは、単なるシステムだけでなく、3ゾーンや4局面を意識して試合を見てみます!

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