(鎌倉殿の13人)2代将軍・頼家のダメっぷりが加速!
三谷幸喜・作『鎌倉殿の13人』(第29話)
(NHK大河ドラマ、2022年)

『鎌倉殿の13人』を私はリアルタイムで視聴していなかったのですが、このたびDVDで観る機会をもつことができました。脚本家の三谷幸喜さんのおかげで、今まであまり興味のなかった鎌倉時代の人々の生活や人間模様を知ることができてうれしいです。今回は第29話「ままならぬ玉」を観た感想をレポートします。
今回は2代目「鎌倉殿」の源頼家(金子大地)のダメダメぶりが加速していきました。13人の重臣(宿老)たちと頼家との亀裂も深まっていきました。
そういうメインストーリーの横でもう1つの重大な話が進行していたことに気づきました。それは殺し屋の善児(梶原善)のことです。善児はもともと伊東祐親に仕える下人でした。善児のやってきたことは次のようなものがあります。
・伊豆に流罪となっていた時代の源頼朝(大泉洋)と八重(新垣結衣)の間にできた子ども(千鶴丸)を川に沈めて殺害。
・源頼朝が挙兵し、2戦目で敗戦しましたが、頼朝に味方していた北条家の長男・宗時(片岡愛之助)を伊東祐親の指示により不意打ちで暗殺。
・頼朝が鎌倉を拠点に勢力を伸ばして伊東氏を制圧した後、頼朝の御家人となっていた梶原景時(中村獅童)に仕えるようになり、頼朝と景時の指示でかつての主君である伊東祐親を暗殺。
・頼朝が上総広常(佐藤浩市)を殺害する際、御所内で上総の刀を抜き取り、抵抗を阻止。
ここまで「鎌倉殿の13人」を観てきて、このドラマの大きなテーマは、権力基盤を固めるための「粛清」だと感じているのですが、善児の暗殺がとても大きな役割を果たしていると思いました。
今回の冒頭で、梶原景時が死に、善児が北条義時(小栗旬)に仕えることになりましたが、景時は義時に何やら巾着袋を預け、それを善児に渡すように言われたという場面がありました。善児はそれを受け取るとき義時に「中を見ましたか」と聞き、義時は「見ていない」と答えました。そして「あの人(景時)も人が悪い。試したんですよ、私の命運を。」と言っていました。
そして、回想シーンで、善児が川で顔を洗う北条宗時を背後から襲って殺害するシーンが映し出されました。そして宗時の懐から奪ったのが今回、義時に預けられた巾着袋だったのです。
最初観た時、あまりピンと来なかったのですが、もし義時が巾着袋の中身を見て、それが兄・宗時のものだと気づいたら義時は善児を絶対に許さず、自分の部下とすることもなかったと思います。義時は気づかず、善児を配下に加えて、おそらく暗殺の仕事をさせるのだろうなと思いました。
景時は善児の運を試し、善児は難を逃れて義時の懐に入ったのです。怖い怖い。
善児が少し高齢になったということでトウ(山本千尋)という女の殺し屋を養成したと義時に告げていました。今後、善児とトウがどのぐらい暗躍するのか。ここにも注目していきたいと思いました。

