忍者研究の最先端が分かる本!
山田雄司 著『忍者学研究』
(中央公論新社、2022年)
むかしテレビアニメで『忍者ハットリくん』というのをやっていて楽しく観ていました。手裏剣(しゅりけん)だの、忍法だのという言葉を覚えたのもその頃です。最近になってNHK大河ドラマの『真田丸』で藤井隆さんが演じる「佐助」という忍者が活躍しているのを観て、忍者について調べてみたくなり本書を読んでみました。
本書の著者、山田雄司さんは三重大学国際忍者センターの副センター長で、史学の立場から忍者について研究されています。本書は読売新聞に連載された「三重大発!忍び学でこざる」をもとに編集されました。本書の帯には「日本忍者協議会・国際忍者学会推薦」と書かれています。このような協議会や学会があることを初めて知りました。
基本書は『万川集海』
本書を読んで分かったことは、まず、忍者の技術や心構えを伝える『万川(まんせん)集海(しゅうかい)』という書物があるということです(19ページ)。これまで私は忍者の技術は秘伝中の秘伝のため、書物には記されていないのではないかと何となく思っていましたが、この考えが間違いだったことが分かりました。また、検索してみると『万川集海』は現代語訳も出版されているようなので、いずれ読んでみたいと思いました。
修験道から始まる
本書を読んで分かったことの2つ目は、忍術の多くは修験道(しゅげんどう)に由来しているということです(21ページ)。修験道とは、山に籠(こ)もって厳しい修行をして悟りを開くという日本の宗教で仏教とも結びついています。忍者に伝わる薬草や火術の知恵などが修験道に由来するそうです。
忍者は気象に詳しい
分かったことの3つ目は、忍者は気象に詳しかったということです(210ページ)。それは、雨音が音をかき消してくれたり、視界を遮(さえぎ)ったりしてくれるので、屋敷に忍び込むの時などに雨の日が都合がよいということが理由の1つにあります。また、放火をするには晴れて乾燥し強風の日は都合がいいというのも理由の1つです。そして、忍者のバイブルである『万川集海』には「風雨の占い16か条」の記載があるそうです。
忍者と薬売り
分かったことの4つ目は、忍者は薬に詳しかったということです。忍者は敵を倒したり、護身や治療に役立てたりするためにさまざまな薬を調合していたそうです(221ページ)。しかも、それを人々に配ったり売ったりして村人と良好な人間関係を作ることで様々な情報を得ていたそうです。そういえば、NHK大河ドラマの『麒麟がくる』では岡村隆史さん演じる菊丸という忍者が薬売りになりすましていたことを思い出しました。
バク転は実用的でない
分かったことの5つ目は、現代のショーやテレビ映像に出てくる忍者はかなり誇大表現があり、たとえばバク転やバク宙などは武術としては実用性がなく、実際に使われた可能性は低いということです(230ページ)。本書の第12章を執筆した川上仁一さんは日本忍者協議会の顧問をされ、甲賀流忍術を継承しているそうですが「中学生の頃、バク転の失敗で頭から落下し、危うく大怪我をするところだった。今も首が若干傾いている。いかに危険かが分かるだろう。」と述べています。壮絶な訓練をされてきたことが分かるエピソードでした。
本書には「現世で忍術、やってみた」というYouTube動画も紹介されています(154ページ)。面白そうです。また、現代ではフランス発祥のパルクールというスポーツ競技が忍者のようなアクションを取り入れているそうです(231ページ)。怪我をしないように注意しながら、今後も忍者に注目していきたいと思いました。