(仕事術)プレゼンテーションの4つの「定石」

大森健巳・他 著『仕事の教科書』
(徳間書店、2019年)

 仕事で大きな成果をあげている人たちがどのようなことに気をつけているのか、ということに興味があります。本書『仕事の教科書』には、ビジネスの世界で有名な著者11人が仕事上の秘訣を公開してくれた本です。内容が盛りだくさんなので章ごとにレビューしていきたいと思います。
 今回は本書に集録されている記事から大森健巳さんの「ビジネスが飛躍するプレゼンテーション術」です。
 大森健巳さんはビジネス・コンサルタントとして活躍され『なぜあの人が話すと納得してしまのか』という著書があります。
 本書『仕事の教科書』に掲載されている大森さんの記事でまず勉強になったのはプレゼンテーションには定石(セオリー)があるということです(433ページ)。大森さんは将棋や囲碁に定石と呼ばれる手筋というものがあって、それを踏まえて経験を積んでいくことが上達の基本だと述べています。私も将棋が好きなので、この喩えには納得できました。そして、特に以下の4つの定石(セオリー)が重要だと思いました。

1. ロゴス・パトス・エトスが重要

 紀元前4世紀頃のアリストテレスの『弁論術』で上記のロゴス(論理性)・パトス(情熱)・エトス(信頼感)の重要性が述べられました。論理性について大森さんは「三角ロジック」を紹介しています。それは①主張(結論として何が言いたいか)、②理由(なぜ、その主張が正しいと言えるのか)、③証拠(理由を支える証拠は何か)、という3つの要素から成り立ちます。これを読んだとき私は以前読んだ伊藤羊一さんの『1分で話せ』の「結論+根拠+具体例」というピラミッド構造と似ていると思いました。

2. 始めと終わりが肝心

大森さんは、話を聴く側の集中力が高いのは、始めと終わりだと述べています(438ページ)。これは覚えておきたい定石だと思いました。そして、話の締めくくりとして大森さんが例示しているのは以下のようなフレーズです。

「以上が、〇〇がなくても、××になれる方法でした。ぜひ、試してみてください。ありがとうございました。」(439ページ)

3. サンドイッチ話法

 大森さんは「始めと終わりが肝心」という定石に対応する話し方として「サンドイッチ話法」を紹介しています(439ページ)。始めと終わりを同じ言葉にします。つまり①概要(これからどのような話をするのか)、②詳細(話の中身)、③概要(①と同じ)、というサンドイッチ構造です。
 これを読んだとき私は以前読んだ小熊英二さんの『基礎から分かる論文の書き方』で紹介されていた「ハンバーガー・エッセイ」と似ているなと思いました。これは①序論(まず主張を書く)、②本論(主張の論拠を3つのパートに1つずつ書く)、③結論(主張を再確認する)というものです。サンドイッチとハンバーガーは「中身を挟み込む」という構造としては同じです。
 アメリカでは現在でも小学校から習うという「ハンバーガー・エッセイ」の方法ですが、これも古代ギリシアのアリストテレス『弁論術』にルーツをもつということで、論文・レポートとプレゼンテーションには共通するものがあるのだと気づきました。

4. 感謝を伝える

 最後にもう1つ、大森さんが紹介しているプレゼンテーションの定石をあげるとすると、「ありがとう」と感謝を伝えるということがあります(441ページ)。これは「上から目線で話さない」という意味でもあります。プレゼンを行なう人は、聴き手がいなければ意味のない存在ということを忘れないようにしたいと思いました。

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