『もののけ姫』制作逸話:宮崎監督はエボシ御前を死なせなかった
鈴木敏夫 責任編集『スタジオジブリ物語』
(集英社、2023年)
500ページを超える、内容盛りだくさんな本書『スタジオジブリ物語』のレビュー第6弾です。今回は『もののけ姫』の制作逸話です。
1997年公開の『もののけ姫』は当時大ブームになりました。私も長蛇の列に並んで映画館で観ました。当時は知らなかったのですが、『もののけ姫』は1980年にテレビ特番で放送予定の企画として構想され、結果として実現しなかったものだったそうです(173ページ)。これを1990年代半ばに鈴木敏夫プロデューサーが宮崎駿監督に提案して、まずは絵本として出版されたそうです。
映画完成後、宣伝を展開するにあたってコピーライターに指名された糸井重里さんは、この絵本を入手してコピーを考えていたのですが、実はこの絵本と完成した映画『もののけ姫』とは全く別のストーリーになっていて、糸井さんの考えたコピーはボツになったそうです(191ページ)。最終的には「生きろ。」というコピーで宣伝がかけられました。
ストーリー面では、宮崎監督が考えたラストを鈴木プロデューサーは「あっけない」と感じて、主人公アシタカ、サンと敵対するエボシ御前を死なせる劇的な展開を提案した(187ページ)ということも初めて知りました。結果として、宮崎監督はこれを拒否してエボシ御前が腕を失うラストとなりました。
本書『スタジオジブリ物語』には、各作品の制作にまつわる貴重なバックストーリーがたくさん盛り込まれています。