嫉妬は幸福の妨げになる? ラッセルの幸福論
バートランド・ラッセル 『幸福論』
(KADOKAWA、1952年 原書1930年)
水木しげるさんの『水木サンの幸福論』を読んで以来、幸福について書かれたものを何冊か読むようになりました。今回はバートランド・ラッセルの『幸福論』を読んでみました。
ノーベル賞受賞者による幸福論
本書の著者B. ラッセルはイギリスの哲学者、数学者で1950年にノーベル文学賞を受賞しています。本書は1930年に書かれており、原書名はThe Conquest of Happinessで直訳するなら『幸福の獲得』です。本書の「復刻に際して解説」には「幸福とは獲得すべき能動的な営みであるととらえる、ラッセルの根本思想がよく表れているタイトルだといえます」と指摘されています(364ページ)。
不幸になる原因とは?
まず、本書の目次がたいへん分かりやすいと思いました。2部構成となっており、第一部が「不幸の原因」となっており、第二部が「幸福をもたらすもの」となっています。第一部「不幸の原因」で挙げられているのは、たとえば、競争、退屈と興奮、疲労、嫉妬、罪悪感、被害妄想、世論に対する恐怖、といったものです。どれも「なるほど」と思うものでしたが、ラッセルが嫉妬について次のように述べていることが最も興味深いものでした。
「彼は自分の持っているものから楽しみを取り出す代わりに、他人の持っているものから苦しみを取り出す。」(113ページ)。
ここでの「彼」とは嫉妬する人のことですが、嫉妬する人は他人のもっているものを見て自分を苦しめるということだと思います。そうではなくて、自分のもっているものから楽しみを取り出すことが重要なのだと思います。水木しげるさんの幸福の7か条の中の第3条「他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追求すべし」に通じる考え方だと思いました。
幸福になる秘訣
それから、第二部の「幸福をもたらすもの」でラッセルが論じていることの中では次のような箇所が最も面白いと思いました。
「幸福の秘訣は次のごときものである――すなわち、諸君の関心、興味をできるかぎり広くすること、そして、諸君の興味をそそる人や物に対する諸君の反応をでき得るかぎり、敵対的ではなく友誼的たらしめること。」(209ページ)
ここでの「友誼(ゆうぎ)的」の意味が分からなかったので、辞書をひいたところ、「友に対する情愛」という意味だそうです。そうすると、諸君の関心、興味を広くして、それに親しむようにしなさい、ということをラッセルは述べているのだと思います。これも「なるほど」と思いました。
ラッセルは、他人に嫉妬などせず、自分の興味や関心を掘り下げていきなさい、それが幸福の鍵ですよ、と教えてくれているように思いました。ラッセルにしたがって、読書などに対する自分の興味・関心を広げ、掘り下げていければいいなと思いました。