独学という投資に価値あり!
本山勝寛 著『最強の独学術 ―― 自力であらゆる目標を達成する「勝利のバイブル」』
(大和書房、2020年)
独学というテーマに関して柳川(やながわ)範之(のりゆき)の『東大教授が教える独学勉強法』、ひろゆきさんの『無敵の独学術』、三木(みき)雄信(たけのぶ)さんの『ムダな努力を一切しない最速独学術』、礫川(こいしかわ)全次(ぜんじ)さんの『独学の冒険』と4冊読んできましたが、今回は本山勝寛さんの『最強の独学術』を読んでみました。
テレワークの広がりや長期休暇は独学の必要性を高めた
本書の著者、本山勝寛さんは子育てや教育に関連する著述やビジネスを展開しています。本書は2020年からのコロナ禍以降のテレワークの広がりや長期休暇などによって多くの人が独学を余儀なくされ、独学ができるか否かで大きな差が開いていくウィズコロナの時代を見据えて書かれた本です。
本書は①1年から2年かけて受験、資格試験、語学の検定試験など目標が明確である場合の独学、②5年後、10年後に芽を出し、花を咲かせるための「種まき」としての独学、③一生学び続け夢を実現する独学、と3つを想定して独学の仕方が解説されている点が特徴的です。
未来の合格体験記?!
①のコツとして提案されている内容がとても具体的で取り入れやすいものだと思いました。まずは、目標を自ら設定し、それを大きくはっきり書いて机の前に貼り出したり手帳に書いて持ち歩いたりすることです。自ら「実現したい」と願い、その気持ちを持ち続けるために、この方法は有効だと思います。
次に、目標を達成した人の合格体験記や先行事例を読み込んで計画立案に役立てます。期日を定めることも重要です。そして、未来の合格体験記を自分で書くという方法が紹介されていて興味深かったです(51ページ)。イメージトレーニングの方法として合格体験記を書くというのは本書を読んで初めて知りました。
また、自分の1日の過ごし方を振り返って、惰性でやっているけれども不要だったり無駄だったりすることが見つかったら、それを「やらないことリスト」として書き出していくという方法(67ページ)も面白いと思いました。これによって余白の時間を作り出して勉強時間にあてることができます。
さらに、自分のスタイルにあった「ルーティーン」を確立することが重要だと本山さんは述べています(73ページ)。ラグビーの五郎丸選手や野球のイチロー選手は決まったポーズや動作をしていましたが、勉強を始める際の「ルーティーン」を自分なりに決めておくというのはたしかに良い方法だと思いました。私がいつもやっている「ルーティーン」は、コーヒーを淹れることだと気付きました。
読書で「種まき」する
②5年後、10年後を見据えた「種まき」としての独学のところで基本となるのはやはり読書だと本山さんは述べています(116ページ)。では、どんな本を読めばいいのか。本山さんは、自分にとって読みやすいものだけに偏った読書を避けながら幅広く読み教養を身につけること(123ページ)と、1つのテーマについて10冊をまとめ読みすること(127ページ)、両方を推奨しています。そして、読書でインプットされた知識をブログなどでアウトプットすることも重要だと本山さんは指摘しています。このあたりは樺沢(かばさわ)紫苑(しおん)さんの著書『インプット大全』『アウトプット大全』などでも言われている内容だと思いました。
長期的な将来展望も
③生涯を通じての学びのところで面白かったのは小中高校で履修する授業時間をすべて合わせると、およそ1万時間になり、これと同じ時間を独学にあてるという考え方です。このために①のように短期集中型の勉強を1日3時間で1年、②のような「種まき」の勉強を1日1時間で3年、この4年のタームを5回繰り返して20年間で1万時間、行うことができます。このように考えると、成人して40歳までに1回、60歳までにもう1回、小中高の授業時間と同じ時間を確保し、成長することができるという考え方を本山さんは述べています(201ページ)。いきなり「一生学び続ける」というのは気が遠くなってしまいそうなので、この考え方はとてもユニークで重要だと思いました。
「やらないことリスト」がユニーク
本書を読んで特に興味深かったのは「やらないことリスト」です。毎日の生活の中で、惰性でやっていることをもう一度見直してみたいと思いました。本書は独学術の具体的な方法が分かりやすく解説されていますので、是非おススメします。