ひろゆき流「ググれば調べられる時代」の独学術とは

ひろゆき 著『無敵の独学術』
(宝島社、2021年)

 以前、柳川範之さんの『東大教授が教える独学勉強法』を読んだことがありましたが、書店のウェブサイトで検索してみると「独学」をテーマとした本が他にも何冊か出ていることに気が付き、今回は本書を読んでみることにしました。
 本書の著者、ひろゆき(西村博之)さんはインターネット掲示板「2ちゃんねる」を開設・運営したことで知られ、実業家、著述家としても活躍しています。 

「今の時代、ほとんどのことはネットでググれば自分で調べることができます。」

と本書の「はじめに」に書かれています(4ページ)。たしかに、インターネット環境の進化が独学の可能性を大きく広げたと思います。ただ、その可能性を生かすには何らかのコツがありそうです。独学のコツに関して本書を読んで得られたのは次のようなことです。

  1. 独学を始めたいという人は人一倍、ゴールを明確にしておく必要がある。
     学校に通っていれば、先生が「お題」を与えてくれて、その「お題」をこなすことが目的となって、何のためにその授業を受け、それが何の役に立つのかを考えなくてもよくなるが、独学の場合はそうはいかない。そこで、何をしたいのか、目的は何なのかを明確にすることから始めて、そこから逆算して順番に疑問や課題を潰していく学び方をするべきである、とひろゆきさんは述べています(44ページ)。
  2. 「好き」なことを仕事にしなくてもよい。
    • 「やりたいこと」や「天職」が見えている人なんて、世の中にはあまりいない。そして、「仕事は仕事」と割り切り、あくまで稼ぐための手段と思っているほうが、効率よく力を抜くことができ、実はいい働き方ができる(66ページ)。
  1. なんでもパクるのは愚か
     先人が残した効率的なやり方を「パクる」ことで成功する確率は高くなる。だから、独学では大いに「パクる」ことをひろゆきさんは推奨しています(91ページ)。ただし、成功者の表面的な部分だけに感化されて真似をしてもだいたい失敗するとひろゆきさんは言います(120ページ)。たとえば、イチロー選手が大学進学しないで野球に打ち込んで成功したことを、「大学に行かないで夢を追いかけるのが正解」だと捉えて、勉強もせず好きなことだけをやっていて歳をとり続けると人生が詰んでしまいます。あるいは、ホリエモン(堀江貴文)さんが「あり金は全部使え」と言っているのを聞いて、それを実行しているとたいていの人は痛い目にあうでしょう。さらには、宝くじで当たった人を見て、「自分も当たるかも」と思って買う人も同様に考え方が表面的です。
  2. 情報を自ら取りにいき、情報を組み合わせることが重要
     今の時代、誰でも簡単に情報にアクセスできるが、好奇心をもって自ら情報を取りにいくことがデキる人の条件だとひろゆきさんは述べています(180ページ)。「調べる癖」が成功への鍵です(195ページ)。
  3. 無理をしない
     「これを調べたい」と思ったときにちゃんと調べられるだけの体力が必要です(244ページ)。サイトに書かれている情報や文献を読むときには集中力と心の余裕が必要になりますが、この集中力と心の余裕は体力に支えられています。また、睡眠不足だと脳のパフォーマンスは大きく下がってしまいます。そして、脳疲労だと思考力や「疑う力」が低下します。そこで、無理をせず、しっかり休みをとることも独学を成功させる条件だということが分かりました。
     本書でひろゆきさんは現代の情報社会で独学しながら生き抜くコツをいろいろと紹介してくれていました。自ら調べることが重要で、他者から「パクる」ことを推奨しつつ、表面的なことだけを「パクる」ことを戒める、さらには無理せず休むことも重要だと述べていたので、私は本書を読んで、ひろゆきさんはとてもバランスのいい考え方をする人だと感じました。ひろゆきさんはインターネットの世界でとても有名な人なので、彼の考え方について知りたい人に本書を是非おススメします。

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