仕事に役立つ80個のアウトプット法

樺沢紫苑 著『学びを結果に変えるアウトプット大全』
(サンクチュアリ出版、2018年)

 以前、樺沢紫苑さんの『学び効率が最大化する インプット大全』を読んだことがありましたが、今回はそれとセットになる本書を読んでみました。
 本書の著者、樺沢紫苑さんは精神科医で、作家としても活躍されています。本書のタイトルにある「アウトプット」とは「出力」することです。脳の中に入れた情報を処理して外界に「出力」することが「アウトプット」です。本書は「アウトプット」のメリットや具体的な方法について述べた本です。

読書をしても忘れてしまう

 樺沢さんは、「アウトプット」のメリットは自己成長につながることだと述べています(20ページ)。読書をしたり講義を受けたりしても、それは「わかったつもり」になっているだけで、実際には知識として定着していないので、どんどん忘れていきます。これは読んだり聞いたりしたことが「身についていない」状態と言えます。そこで「読む」「書く」という「インプット」を「話す」「書く」「行動する」という「アウトプット」と組み合わせることで記憶に定着させ、「身についた」状態にしていこうというのが本書の趣旨です。これを、脳科学的に言うと、脳は重要な情報を長期記憶として残すので、「アウトプット」することで脳に重要な情報だと判断させるということで、目安として情報の入力から2週間で3回以上の「アウトプット」がよいと樺沢さんは述べています(25ページ)。
 ここまでが本書の総論的な部分ですが、本書には80個の具体的な「アウトプット」の方法が紹介されています。この具体例がとても貴重だと私は思いました。どれも重要だと思ったのですが、は特に以下の2つは最上位ランクだと思いました。

モチベーションを高める「小さな目標設定」

 1つ目は、「書く」という「アウトプット」の中の「目標を書く」という項目です。目標を書くことが重要だというのは聞いたことがありましたが、本書では、目標の良い書き方と悪い書き方が示されていたのが勉強になりました。樺沢さんは、難易度が高すぎる目標を書いても実現しないと言います。実現する目標の書き方のコツは、ちょっと難しい課題を書くこと。つまり「ちょい難(むず)」に設定することです。脳科学的には「高すぎる目標」はモチベーションの源であるドーパミンという脳内物質が出ないのですが、「ちょい難」の目標だとドーパミンが出てモチベーションがわいてきます。
 そして、期限をつけ、小さな目標に分割したうえで、具体的な行動としてのTO DOに落とし込む。これを手帳などに書いて何度も見返していけば、その目標のために一定期間の努力をすることができ、目標が実現していくということが解説されていました(168ページ)。私は目標設定について、ここまで詳しく考えたことはなかったので本当に勉強になりました。

日本人は断るのが苦手

 重要だと思った具体例の2つ目は「話す」という「アウトプット」の中の「断る」です。樺沢さんは、日本人は断るのがとても苦手だと言います(66ページ)。それは「相手の気分を害したくない」とか「断ると昇進に響く」、あるいは「仕事を断ると次の仕事がこなくなる」と考えるからだと思います。私にも経験があります。しかし、断らなければ、自分が本当にやりたいことに対して、エネルギーと時間をふり向けることができなくなっていきます。樺沢さんは、「『断る』ことによって、特にデメリットは生じません。断ってみればわかりますが、むしろ、『断る』ことでたくさんのメリットが得られるのです。」と述べています(67ページ)。そのメリットとは、本来すべきことにエネルギーと時間を集中でき、「やりたい仕事」の依頼が増え、「やりたくない仕事」をするストレスが減り、むしろスッキリし、仕事でしっかりとした結果を出せるようになることです(67ページ)。

幸福度とも関係する?!

 年始めに立てた年間目標を基準として、それに沿っていない仕事は迷わず「断る」。また、自分の人生の中での「優先順位」を明確化しておいて、「優先順位」の低いことを頼まれたり、誘われたりした場合も「断る」ことが重要で、断らない人は確実に「不幸な人生」を歩む、というのが樺沢さんの意見です(66ページ)。私は、日本人の幸福度が低いことの原因も「断る」ことが苦手なことにあるのではないかとすら考えてしまいました。本書には「謝罪(感謝)+理由+断り+代替案」という「断りの公式」まで示されていました(69ページ)。たとえば残業を頼まれた場合、「すみません(感謝)。本日、子どもの塾の送迎があるため(理由)、残念ながらお引き受けできません(断り)。明日の午前中でしたら終わらせることができるのですがいかがでしょうか(代替案)」。これなら、とても誠意が伝わる断り方で、人間関係もそんなに悪くならないように思いました。


 本書から学んだ目標の書き方をさっそくやってみたいと思います。そして、優先順位の低いことについては断って、その分の時間を本来やるべき事柄にふり向けて目標実現していければいいなと思いました。本書には他にもいろいろな「アウトプット」の方法が紹介されいますので、是非おススメします。下記リンクをクリックして本書の内容をチェックしてみてください。

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