手帳に目標を書き込むメリットとは?

樋口圭哉 著『目標達成のための手帳術』
(パル出版、2022年)

 私は今まで手帳に仕事や私用の予定を書き込んで時間管理をしてきました。忘れてはいけないことを書いておく道具として手帳を使ってきましたが、本書の表紙には『目標達成のための手帳術』という題名の前に「やりたいことを何でも叶える」というフレーズが書かれており、また著者名のところに「目標達成の体現者」という肩書も書かれています。私がやっている手帳の使い方よりももっと積極的な活用法が書かれていると思い、本書を読んでみました。

幅広い業種で活躍する著者

 本書の著者、樋口圭哉(ひぐち・よしちか)さんは株式会社西武で人材育成やチームビルディングの統括マネージャーを経験された後、独立起業し、現在は研修講師をされているほか、社会保険労務士事務所を開設し、美容室、学習塾の経営もされています。幅広い業種にまたがってご活躍されているという印象です。

「やりたいこと」を100個書き出すことから

 本書に書かれている手帳術とは、1. 自分のやりたいことを100個書き出し、2. 100個のやりたいことを8つの領域にカテゴリー分けし、3. 各カテゴリーから1つを選んで目標達成のためのアクションプラン(行動計画)を書き出し、4. 毎朝100個のリストを声に出して読み上げる、というものです。手帳は外出中でも手もとに置いて眺めることができますので、常にやりたいことのリストと行動計画を意識しながら日々の生活を送ることができるというのがポイントだと思いました。
 

最初は20~30個でもOK

 やりたいことを100個書き出すというのは簡単ではありません。私もやってみましたが、20個しか書き出せませんでした。樋口さんがセミナーの受講者にこれをやってもらうとだいたい30個ぐらいしか書けない人が7割ぐらいだそうです(60ページ)。樋口さんは、それでもよいと述べておられ、「やりたいことを普段からあまり考えていなかったということ」を自覚したうえで、再度、自分と向き合ってやりたいことに思いを巡らせることを推奨しています。

8つのカテゴリーに分類

 やりたいことを分類する8つのカテゴリーですが、①仕事、②生活、③お金・貯蓄、④人間関係、⑤健康・美容、⑥学び・教養、⑦旅行・休暇、⑧趣味・楽しみ、の8つです。この8つに分類しながら、多くあげることが出来ているカテゴリーと、全くあげることが出来ていないカテゴリーを自覚して、今後どうしたいのかを再度自分に問うてみると、もう少しリストが増えてくるかもしれません。
樋口さんは、やりたいことを書くときにはキーボードでタイプするよりも手書きで書くことを重視しています。手書きで目標を書いたほうが42%高かったというアメリカの心理学者の実験も紹介されています(55ページ)。キーボードでタイプするときに必要な指の動作は8種類ですが、手書きをするときに必要な指の動作は1万種類もあります。手書きをすると複雑な指の動きによって脳幹の網様体賦活系(RAS)が刺激されることが重要で、活性化したRASからの指示によって潜在意識が目標達成に向けて動き出すというメカニズムが紹介されています(56ページ)。これはカーナビシステムに行き先をインプットするようなもので、RASに備わったGPS機能によって目的地まで辿り着けるにしてくれる、というのが樋口さんの考えです(58ページ)。たくさんの目標を達成しておられる樋口さんの言葉だけに重みがあると思いました。

「マンダラチャート」を活用して行動計画へ

 さて、目標達成のためのアクションプラン(行動計画)に関連して樋口さんは、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手が高校時代に書いていた「マンダラチャート」を目標達成シートとして紹介しているのが印象的でした。以前読んだ樺沢紫苑さんの『インプット大全』では情報の洪水にアンテナを立てるために、自分の関心のあるテーマやキーワードを書き出して注意を向けることに活用するものとして「マンダラチャート」が紹介されていましたが、本書では各カテゴリーから選んだやりたいこと(目標)を達成するために行う日々の行動を書き出すものとして「マンダラチャート」が紹介されています(75ページ)。ここで樋口さんは「頑張らなければできないようなこと」、難しすぎることは書かないようにして、「このくらいならできそうだと思えるもの」を書き出すように注意するようにと述べています(76ページ)。「ちょっとだけ難しいこと(ちょいムズ)」に設定することが大事というのは樺沢さんと樋口さんに共通していると思いました。

「朝活」として読み上げる

 そして、毎朝の読み上げです。樋口さんは長年見てきた中で、やりたいことを何でも叶える人たちに共通していることとして「モーニングルーティーン」があると述べています(79ページ)。そして、早起きの習慣があると言います。「朝活」という言葉もメジャーになり、朝の時間を充実させることに注力している人は多いようです。1日のうちで最も集中力が高い時間であり、早起きすることで気持ちにゆとりができ、動き出しがスムーズになり、結果として行動量は増えるという効果を樋口さんもあげておられます(81ページ)

 本書を読んで、キーボードでタイプするときに必要な指の動作は8種類なのに対し、手書きをするときに必要な指の動作は1万種類もあるということを初めて知りました。今後はノートや手帳に手書きで書くという動作を大事にしていきたいと思いました。そして、毎朝リストを読み上げることの効果も、これまでは意識していませんでした。もう1つ付け加えると、本書では寝る前1分の「振り返り」をして、目標達成に向けた行動をできたか、できなかったかをゲーム感覚でチェックすることも重要だとされています。1日の始めと終わりに「やりたいこと」を意識することで自分の「体質」をつくり変えていくことが大事だと分かりました。

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