質問は「脳の総力戦」!?

茂木健一郎 著『最高の結果を引き出す質問力』
(河出書房新社、2016年)

質問が苦手なのは「ふつう」

 質問をすることに苦手意識があるので、質問力に関する本を何冊が読んでみることにしました。本書から得られた知見を述べてみたいと思います。同様に、質問が苦手だと思っている人のヒントになれば幸いです。
 本書の著者、茂木健一郎さんは脳科学者で、テレビ番組にも多数、出演しています。
 本書の冒頭で、質問に対する苦手意識をもつのは多くの日本人にとってふつうのありふれたことだという主旨のことが書かれていて少し安心しました。茂木さんは、日本の学校のテストや入試、そして会社でも、与えられた課題を、できるだけ早く正確にこなすことが求められてきたことを、日本人の質問下手の原因として指摘しています(27ページ)。これまでの学び方や働き方では、「答えを早く見つけた人が重宝されてきたので、質問をして自ら問題を見つけようとする習慣がつきませんでした」と茂木さんは述べています(28ページ)。これまでを振り返って、とても納得できる指摘だと思いました。

質問にはキーワードがある

 本書には章の末尾に各章のポイントが箇条書きされています。これはとても便利ですが、その中でも第3章の末尾に示されているポイントに、「いい質問をするためには『今』『何がしたい?』『どのように(どうやって)』と常に問う」というものがあり(132ページ)、とても重要だと思いました。「今」は時間に関するキーワードで、「『今』を気にすることによって、観察力が上がり、具体的な対策が見えやすくなります」と茂木さんは指摘しています(125ページ)。また、「何がしたい?」は目的に関するキーワードで、目的を問いながら、ものごとを進めていくことによって、関係する人の心が1つになる(126ページ)、そして、「どのように(どうやって)」は手段(方法)についてのキーワードで、無数にある手段・方法から自分にやれるものを見つけて試し、うまくいけば継続し、うまくいかなければ次の手段・方法を試すということを繰り返すことが問題を解決するために重要となります。そして、「少しだけ」はオールマイティーなキーワードだと茂木さんは述べています(127ページ)。

いい展開をつくる質問

 茂木さんは「いい質問とは、いい展開をつくる質問だ」とも述べて(146ページ)、そうした「展開を先読みする力」は、過去の経験も参照しながら、観察した事実に基づいて「推論する力」と結びついているので、「いい質問をするには、たくさんの経験を蓄えることがどうしても必要になります」と述べています(147ページ)。つまり、いい質問は過去を参照し、現在の状況をありのままに見て、未来を予測するような「脳の総力戦」から生まれるという茂木さんの指摘が本書を読んで一番印象に残りました。
 さらに、本書では質問力を高める8つの具体的なアクションが示されています。その中で私が気に入ったものは次の2つです。1つは「思考をアウトプットする」、もう1つは「芸術を観る」です。前者については樺沢紫苑さんの『アウトプット大全』でも強調されていることなので、やはり大事なのだなと再確認できました。そして、「芸術を観る」については、簡単に解けない問題と向き合う練習で、人生のシミュレーションになると茂木さんは述べています(190ページ)。これは大事なことだと思いました。


 本書を読んで、以前に読んだウォーレン・バーガーさんの『質問力を鍛える本』と同様に、自分への質問のことが多く書かれていることに気が付きました。会議や講演会などの質疑応答の時のことが私の念頭にあったので、主に他者への質問のことを考えていましたが、そのベースとなるのは、自分への質問なのではないかと考えるようになりました。これから、自分に質問すること、自問することを意識してやってみようと思いました。

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