私はここで何を決めようとしているのだろう?
ウォーレン・バーガー 著『質問力を鍛える本』
(ニュートンプレス、2022年)
質問への苦手意識
会議や講演では質疑応答の時間がとられるのが一般的ですが質問するのは難しいと感じています。質問に苦手意識を感じているのは私だけではないと思います。慣れが足りないせいもあると思いますが、何かコツのようなものがあるのかもしれないとも思います。質問への苦手意識克服のため、本書を読んでみました。
本書の著者、ウォーレン・バーガーさんはアメリカの著述家で、質問の仕方を中心テーマとしています。本書の著者紹介によると世界中の何百人もの起業家や創造性豊かな人たちを取材した経験があるそうです。
意思決定には質問がつきもの
本書を読んで私が得た知見の1つは、質問は決断(意思決定)、創造、人間関係、リーダーシップに必要となるスキルだということです。組織の意思決定では会議で行われることも多いので、決断(意思決定)に質問が関わるというのは分かります。それだけでなく、本書では会議などで他者に質問することだけでなく、「私はここで何を決めようとしているのだろう?」のような自分への質問の例が多く掲載されていることに気づきました。
この、自分への質問は創造ということにも関わっています。バーガーさんは「考えを深めるための5つの質問」をあげています。それは、
「新しい視点で見るにはどうすればよいか?」
「思い込んでいることはないか?」
「焦って判断しようとしていないか?」
「何か見落としていないか?」
「一番大事なのは何か?」
というものです(49ページ)。私も自分で何かのテーマを考えたり決断したりするときに、これらの質問を自分にしてみたいと思いました。
してはいけない質問もある
もう1つ勉強になったのは、次のような悪い質問、「してはいけない質問」の例です。特に上司が部下にするのを避けたほうが良い例なのですが、それは、
「なぜ、○○したのですか?」
「誰のせいでこうなった?」
というものです。「なぜ、○○したのですか?」という質問を上司がすると部下は「正当化」モードに移行してしまうとバーガーさんは指摘しています(380ページ)。より良い質問は「何が原因でこうなったのかを教えてください」です。このほうが、相手を非難するニュアンスが薄れて、「原因」に焦点を当てることができます。それから「誰のせいでこうなった?」はスケープゴートに焦点を当てることになってしまいますが、重要なことは問題に対処して前進することです。これらは気をつけたいと思いました。
質問は改善できる
もう1つ勉強になったのは、質問を改善するための次のような指針です。それは①開く、②閉じる、③鋭くする、④「なぜ?」を加える、⑤ソフトにする、⑥中立化する、の6つです(412~413ページ)。①開くは「はい」「いいえ」以外で答えられる形式にすることで、逆に②は「はい」「いいえ」で答える形式にするというものです。③は論点を正確で具体的なものにして、相手の答えもその論点から外れにくくする方法です。④は「あなたが最も懸念しているのはどのような傾向ですか? それはなぜですか?」と尋ねることで、質問の背後に迫っていく方法です。しかし、先述のように、場合によっては相手を非難するニュアンスが出てくるため注意が必要です。そこで、⑤「ソフトにする」という方法があり、最初に「興味があるのですが」というような言葉を加えることで非難のニュアンスを和らげることができます。⑥の中立化とは、検察官が行なうような誘導尋問ではなく、純粋に相手の感想や意見を問うような「○○を観てどう思いましたか?」のような質問です。
本書を読んで、質問が役に立つ場面や自分への質問、質問を改善するコツが学べたように思います。本書で学んだことを、これから生かしていきたいと思いました。