「To Doに置き換える」というストレス対処法

樺沢紫苑 著『ストレスフリー超大全』
(ダイヤモンド社、2020年)

 私も仕事や人間関係のストレスを日々感じています。社会人になってから何とかストレスを軽減したり、発散したりできる方法はないものかと考え続けてきたように思います。そのヒントを得たいと思って樺沢さんのYouTube動画などを観て、著書も何冊か読みましたが、今回は樺沢さんがストレスについて詳しく述べている本書を読んでみました。


 本書の著者、樺沢紫苑さんは精神科医で、作家としても活躍されています。本書ではストレスとの付き合い方や考え方、そして具体的な対処法が述べられていて、とても参考になりました。本書では人間関係、プライベート、仕事、健康、メンタル、生き方という幅広い分野にわたってストレスとの関係が述べられていますが、今回は本書の前半で述べられているストレスの基本的な対処法と考え方の部分について、私が気付いたことを以下の4点に絞ってご紹介したいと思います。

1. ストレスをゼロにする必要はない

 本書のタイトルは『ストレスフリー超大全』ですが、樺沢さんはストレスをゼロにする必要がないということを本書冒頭で述べています。たとえば、仕事の大事な商談やプレゼンの前に感じるプレッシャーや緊張は「いいストレス」であって、このストレスのおかげで、いろいろなことを調べて準備し、何度も練習するので、知識が増えスキルが上昇します。
 また、人間関係のストレスも、それを解決しようとして自分の考え方や言動を見直し、相手の気持ちを考え、人間関係を改善しようと努力するので人間的な成長を促すと樺沢さんは言います(2ページ)。すべてのストレスから逃げたり、すべてのストレスの原因を取り除いたりすることは不可能だし、その必要もないというのが樺沢さんの立場です。
 本書のテーマは、体調を崩したり、メンタル疾患に陥らせたりするような過剰なストレスです。そして、①寝ているときにストレスがない状態になっていること、②次の日にストレスや疲れが持ち越されていないこと、が目標とされています(3ページ)。私はストレスを考えるとき、このような目標をもったことが今までありませんでしたが、夜、寝ようとしたときに嫌なことを思い出してよく眠れないという状態を経験したこともあるので、①のようなことが実現できたら、とてもいい生活になると思いました。

2. 不安や悩みを解決すべく行動すること

 本書を読んで最も勉強になったのは、「不安」というものに対する脳科学的な説明です。「不安」な状態、「ピンチ」の状態、「困った」状態ではノルアドレナリンとアドレナリンという脳内物質が分泌されて、心拍数があがり、全身に血液が行き渡り、「いてもたってもいられない状態」になるということ(20ページ)。たしかに、私にも経験があります。これを打ち消す方法を樺沢さんは次のように指摘しています。

「多くの人の間違いは、悩みを抱え、不安な状態になったときに、「どうしよう、どうしよう」と思考停止のループに入ることです。行動を起こさない限り、いくら悩んでも絶対に問題が解決されることはありません。

 ですから、不安を消すことは簡単です。「行動する」ことです(21ページ)。

 本書のこの箇所は本当に勉強になりました。そして、樺沢さんは、世の中には「インプットの世界」の住人と「アウトプットの世界」の住人がいると述べて、現実変化と自己成長を起こすためにはインプットだけではダメだと言います(22ページ)。インププットで脳の中の知識、情報を増えますが、それを活かして「言う」「書く」「行動する」というアウトプットをすることで不安や悩みが解決に近づくと述べています。「言う」ということのバリエーションには「相談する」「カウンセリング」「友達とのおしゃべり」「大声で叫ぶ」などがあります。「書く」ということには、悩みを書き出したり、日記を書いたり、というバリエーションがあります。そして「行動する」には全力疾走やスポーツ、筋トレなどの運動があります。本書のこの箇所を読んで、樺沢さんの著書『アウトプット大全』とのつながりが分かり、また、これがストレスの軽減とも関連していることも分かりました。

3. フィードバックしながら行動を続けること

 対処法を調べることも「行動する」ことのバリエーションですが、対処法が分かったら1~2週間ぐらい実行してみて、フィードバックすることが重要だと樺沢さんは述べています(27ページ)。フィードバックとは、現在の行動を評価し、次の行動の指針を得ることですが、本書では3つの手順が紹介されています。手順1は、現在の行動がうまくいっていない理由を3つ書く。手順2は、うまくいっている点を3つ書く。手順3は次のTo Do(やるべきこと)を3つ書く。この3つのステップを繰り返しながら「悩み」をTo Doに置き換えて行動を続けることが大事だと樺沢さんは述べています。これで、「どうしよう、どうしよう」という思考停止のループを避けることができます。

4. 1:2:7の法則


 これはアドラー心理学について書かれた『嫌われる勇気』という本の中で紹介されている法則です(72ページ)。10人の人がいれば、1人はあなたを嫌い、2人はあなたに好意を抱き、7人はどちらでもない、ということがユダヤの教えの中にあるそうです。もし、これが正しいすると、全員に好かれようとするのはムダな努力だということになります。「八方美人」も虚しい努力ということになります。私の周りで、この法則があてはまるのかどうかは今のところ分かりませんが、こういう教えがあることを頭に入れておくと、気が楽になるような気がしました。

 本書には、生活な中で役立つストレスの対処法や考え方がとてもたくさん紹介されており、とても参考になりました。本書の最後のほうでは、ストレスの問題が生き方の問題として考察されてるのも、とても読み応えがありました。本当にオススメの1冊です。

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