(映画『コジラ-1.0』鑑賞記)知恵を使えば「カミカゼ特攻」を克服できる!
山崎貴 脚本・監督『ゴジラ-1.0』
(TOHO、2023年)
2024年元旦、『ゴジラ-1.0』を観ました。昨年の元旦は『Dr. コトー診療所』を観ていましたので、2年連続で元旦の映画鑑賞です。そして、俳優・吉岡秀隆さんは両作に出ていますので、2年連続で正月に観ることとなりました。ゴジラは以前『シン・ゴジラ』も観ましたが、今作のほうが断然面白かったです。その理由を含め映画『ゴジラ-1.0』鑑賞記を記しておきたいと思います。
今作が面白かった理由を考えてみると、まず、映画が扱っている時代がとても興味深い時代だったというのがあります。太平洋戦争末期から戦後直後の日本にゴジラが現れるという時代設定です。戦争末期の南方戦線の島で日本軍のある部隊がゴジラと遭遇し、ゴジラは島の住民には「深海魚が浮き上がった日にゴジラが出る」という言い伝えがあることが映画内で言われていました。そして、戦争終結後、ゴジラがビキニ環礁の核実験で被爆して、ゴジラから核反応が出るということ。
戦争や核実験という人類にとっての負の出来事とゴジラの存在が重なっているところが、映画の迫力を増していたと思いました。
続いて、ゴジラを迎撃しなければならない人間たちの生活や思いを描いた部分がとても面白かったです。『シン・ゴジラ』は、このあたりのところが日本とアメリカの政府関係者や自衛隊関係者の会議や話し合いに多くの時間が割かれていた印象です。
それと比べると『ゴジラ-1.0』は、戦争末期にゴジラに遭遇しながら銃を撃てずに仲間の全滅を招いた主人公・敷島(神木隆之介)、航空整備士・橘(青木崇高)、終戦の混乱期に孤児を預かって育てる典子(浜辺美波)などの生活や思いがしっかり描きこまれていたのが、とても良かったです。
さて、ゴジラを迎え撃つ旧・日本軍の生き残りたちの考案した方法が原始的でリアルさを感じました。それは、ゴジラを相模湾の最も深い部分に沈めて水圧によって圧死させようとするものです。また、念のために、沈めた後で急激に浮上させて圧力差で仕留めるという作戦です。
この作戦でもゴジラが死ななかった時に備えて、ゴジラの口の中に火薬を積んだ飛行機で特攻することを元パイロットの敷島は考えます。戦争末期に敷島は特攻兵の任務につきましたが日本が降伏し、生き延びたという経緯があります。ゴジラに特攻することで自分の中の「戦争を終わらせる」という思いでした。
さて、作戦実行しましたが、ゴジラは海底深く沈まされた後、急浮上させられましたが生きていました。そこで敷島の特攻が行われ、ゴジラは姿を消しました。
敷島は? 何とパラシュートで脱出し生きていました。航空整備士・橘がパラシュート脱出機能を備え付けて、敷島に脱出方法を指示していたのです。
「カミカゼ特攻」という日本軍の無謀な戦法が克服されたのが、とてもいいと思いました。そして、死んだと思った典子が奇跡的に生きていたというハッピーエンドも用意されていました。
ただし、海底に沈んだゴジラの心臓が動いていて、今後復活しそうな予感も残されました。その後の『ゴジラ』シリーズの原点を示す作品として、ファンにはたまらないエンターテイメント映画だと思いました。