あなたは「ついついやってしまうこと」に気づいているか?『才能のトリセツ』で自分を再発見
佐野貴 著『才能のトリセツ』
(PHP研究所、2025年)

自分にどのような才能があるのか、ということは普段あまり考えたことがありません。というよりも、考えても大した才能が見つからないので、考えるのが嫌になっているという方が正しいと思います。読者のみなさまはどうでしょうか?
本書の著者、佐野貴さんは、才能研究を基盤とした起業プロデュースを手がけておられます。本書の冒頭では「才能がない人はいない」と書かれています。「え、本当に?」と疑問を感じてしまうのですが、本書を最後まで読む頃には、私にもおぼろげながら才能らしきものが見えてきました。本書を読んで、とても印象に残ったことを紹介します。以下の見出しは、すべて本書の見出しでもあります。
「才能とは行動の癖である」
本書を貫く考え方に「才能とは行動の癖である」というものがあります。この癖とは「ついついやってしまうこと」。そして、その人にとって苦もなく自然にできてしまうこと。
こういう癖は、誰にでもあるはずなのですが、本人が気づいていないことが多い。それは、自然にできてしまっているから。
そういうわけで、本書では著者からの質問に読者が答えを考えて、ワークシートに記入しながら読み進めることで、自分の行動の癖、つまり自分の才能を発見していく形式になっています。
「もっとこうすればいいのに」
著者からの質問の第1番目は、周りの人に対して「もっとこうしたらいいのに」」「私ならこうするのに」と思うことはありますか? というものです。
私は最初、この質問にはっきりと答えることができませんが、読み進めるうちに徐々に浮かんでくるようになりました。その1つは、「大事なことはメモしておけばいいのに」というものでした。そして、もう1つは「もっと早めに取りかかればいいのに」というのが浮かんできました。
特に「早めに取りかかる」というのは、時間切れ間際になって焦るのが嫌で、物事を落ち着いて進めていきたいという気持ちの表れです。自分が失敗を恐れる小心者だという意識と結びついて、本書を読むまでは、あまりポジティブに考えていませんでした。これが自分の行動の癖になっていて、しかもそれが才能だということに気づかせてくれたという点で、本書を読んでよかったと思いました。
「才能を知る者は負け戦をしない」
自分の才能を知ることは、自分の「勝ちパターン」を知ることだという意味です。この言葉は本書の後半に書かれていて、とても心強い言葉だと思いました。
「自分の師匠は自分でいい」
本書を読んで、最もいい言葉だと思ったのは、この「自分の師匠は自分でいい」という言葉です。著者、佐野さんの解説では、上司に言われたとおりにやったり、人のやり方を真似したりすることで、苦戦している人がたくさんいるとのことです。私も何となくそういう経験をしたような苦い記憶が蘇ってきました。自分の才能にフィットしたやり方ではなかったと反省しています。
本書を読んで、これからは「自分の師匠は自分でいい」ということを意識していきたいと思いました。本書は、これから就活をする人、就職したけど、なんとなくモヤモヤを感じている人におすすめの本です。

