メモをとることの5つの効用

前田裕二 著『メモの魔力』
(幻冬舎、2018年)

「書く」ことはなぜ良いのか?

 以前から漠然とですが、「書く」という行為をすると何かよい効果があるのではないかと思っていました。手帳に1年の目標を書いておいて、年末に目標が達成できたかを振り返るということを何年も続けています。「書く」という行為には、その他にもいろいろな効果があるのではないかと思い、本書を読んでみました。

メモは言語化と思考のツール

 本書の著者、前田裕二さんは株式会社SHOWROOMを経営する実業家で、コメンテーターとしてテレビ出演のご経験もたくさんあります。本書の帯の情報では72万部のベストセラーを記録しているようです。
 本書を読んで気づいたことは、まず何と言っても「メモをとる」という「書く」行為が「思考と言語化のきっかけ」を与えてくれるということです(36ページ)。メモは言語化のツールで、思考を深めてくれるので、人間の成長に与える効果は大きいという大前提に気づかされました。 

5つの効用

 より具体的な効果について前田さんは5つあげています。①知的生産性が増す、②情報獲得の伝導率が増す、③傾聴能力が増す、④構造化能力が増す、⑤言語化能力が増す、の5つです。①の知的生産性に関して補足すると、メモすることによって情報のストックを増やすとともに、そのストックをもとに自分なりのアイデアを生み出すことにつなげていくことができるようになると前田さんは言います(37ページ)。これは簡単ではないように思いましたが1番目にあげられていることから前田さんが最も重視していることだと感じました。

「離見」訓練のためのプラス・アルファ

 本書から得られた重要な知見がもう1つありました。それは、たんにメモをとっているだけでは、「自分目線」や「主観」に偏ってしまう傾向があるということです、そのことを前田さんはが指摘し、「離れた場所からフラットかつ客観的に自分を見つめる『離見(りけん)』を意識することが、自分の考えを伝える力を伸ばすために重要だと前田さんは指摘しています(111ページ)。この「離見」とは、「自分を一歩引いて客観視する」ということで、能を大成した世阿弥が用いた言葉です(110ページ)。能を舞う自分の演技を観客の目から見るのが「離見」で、この観客側の「離見」を自分側の「我見(がけん)」と一致させていくことが芸に秀でる上で重要だと世阿弥は述べています。このことはビジネスの世界でも重視されているようで、ジャパネットたかた創業者の高田明さんも、このことを意識して伝える力を伸ばしていったのだそうです(111ページ)。
 本書では「離見」を鍛えるための訓練として、自分を撮った動画を観ることや、自分が毎日自由に撮った写真を振り返って、自分の気づきを言語化しておくという方法が紹介されていました(112ページ)。これはとても面白そうな方法で初めて知りました。やってみたいと思いました。

「自分とアポをとる」

 その他にも、スケジュールに書き込むという行為は、「自分とアポをとる」ことだとも表現されていて(170ページ)、「なるほど」と思いました。
 本書を読んで、メモをとることの効果が今までよりずっと深く理解できましたので、生活の中でメモをとることをもっと増やしていきたいと思いました。また、毎日自由に撮った写真を振り返って、自分の気づきを言語化するということを日記と組み合わせると面白そうだと思いました。

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