タイムパフォーマンスUP↑↑の切り札は「時間の家計簿」

和田秀樹 著『人生に差がつく時間の作り方・活かし方』
(コスミック出版、2022年)

 時間の有効な使い方については樺沢紫苑さんの『神・時間術』を読んだことがありましたが、さらに知識を増やすために本書を読んでみました。
 本書の著者、和田秀樹さんは精神科医として多くの著書があり、大学受験のための勉強法についての指南書も書かれています。
 本書では、和田さんが日頃の生活から工夫を重ねて編み出してきた76個の時間の有効活用の要領が紹介されています。そのなかで私が特に気に入ったのは以下の4つです。

①常に100%を求めるのではなく、80%でよい

 和田さんは、何事にも合格点というラインがあり、「そこそこできたら満足、とするのが要領の第一歩」と述べています(38ページ)。受験の場合でいうと、トップ合格する生徒は一番非効率で、合格最低点で入学するのが要領よく効率的だと和田さんは述べています。このあたりは受験生にはうれしいアドバイスだし、実は受験以外のところにも役立つ考え方なのだなと感じました。

②「時間の家計簿」をつけると、「時間投資」の効率がわかる

 自分の時間をこれまでどのように使っていたかを記録し分析することを和田さんは薦めています。1日24時間を1時間ごとに記録するフォーマットを用意して、自分の行動を記録する。睡眠、トイレ、食事、働いている時間、勉強している時間などを記録し、家計簿でいうところの固定費にあたる必須の時間と、今後は有効活用できる時間とを割り出し、何のための時間なのかを明確にしていくことが時間活用の重要テクニックだと和田さんは述べています(102ページ)。私の場合は、手帳に時間を書き込めるスペースがあるので、今より少し記録を詳しく書けば「時間の家計簿」になると思いました。

③本は、自分が必要なページを読むだけで十分

 読書は自分を高めるために必要ですが、いくらたくさん読もうと思っても、それには限界があるので、目次を見て、興味があるところや役にたちそうな箇所を抜き出して読むということを和田さんは推奨しています。これを和田さんは「点読」と読んでいるそうです(117ページ)。「速読」や「多読」「乱読」というのはよく聞きますが、「点読」というのは初めて聞きました。こういう読書法を学校では教えてくれない傾向にあると思いますが、読書のハードルを下げる有益なアドバイスだと思いました。

④朝型への転換を考えよ!

 朝の時間はテレビなどの誘惑も少なく、電話もかかってこないので、集中して仕事をこなすことができると和田さんは述べています(219ページ)。そして、和田さんの知り合いにも朝型の人が増えており、残業が減って、帰宅が早くなって家族と過ごす時間が増えるというメリットが報告されています。会社勤めの人は就業時間前のビフォア8(エイト)を有効活用し、アフター5(ファイブ)は家族との時間、娯楽の時間にあてるという方向を目指すのがよいというのが和田さんの提案です。
 

 普段の自分が習慣的に行っている行動を見直し、効率の面で改善できることはないかと考えることが必要だというのが本書全体のメッセージのように感じました。ただ一方で、何事も完璧を目指すのではなく合格点である80点ぐらいを目指すというところに和田さんの提案の面白さがあると思いました。さらに、和田さんは「マネー・イーター」(金食い虫)に対して「タイム・イーター」(時食い虫)という言葉も使っており、自分が不得意なこと、苦手なことには手を出さず、得意な分野を伸ばすことの重要性も指摘しています(152ページ)。苦手克服と得意伸展のバランスを考え、苦手克服に見切りをつけよ、というのが本書のメッセージだと思いました。

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