天引き貯金して「収入の7~8割」で暮らせるか?

勝間和代 著『勝間式生き方の知見』
(KADOKAWA、2021年)

 以前、高橋信典さんの『退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書』を読んだのですが、定年退職後の年金や再就職のことなどを考える機会をもつことができてとても良かったと思いました。今回はその延長として老後まで含めた仕事やお金のことをもう少し考えようと思い、経済評論家の勝間和代さんの本を読んでみることにしました。


 本書の著者・勝間和代さんは経済評論家で以前はテレビでも拝見したことがありましたし、最近はYouTubeの動画も配信されています。
 本書のサブタイトルは「お金と幸せを同時に手に入れる55の方法」となっており、勝間さんが52年の人生の中でトライアンドエラーを繰り返しながら得た55個の知見をまとめたものです。本書を読んで、私はたくさんの気付きが得られたのですが、今回はお金と仕事のことに関連して特に参考になった3つの知見を中心として紹介したいと思います。

1.「収入の7~8割」で暮らす

 本書を読んで最も勉強になったのが、この「収入の7~8割」で暮らすという知見です。勝間さんは、経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんも同様の考えであったと述べています(248ページ)。景気がいいときに浪費する習慣がついてしまうと、景気が悪いときに困るので、浪費をしない生活スタイルを身につける必要があります。
 ただ、お金が残ったら貯めるというやり方では、お金は貯まらないので、収入の2~3割を給料日に天引きするという方法をとることがポイントです。天引きして最初からなかったことにして、残った分を最適化して生活設計する。この方法さえ行っていれば、「老後2000万円不足問題」などの不安を煽る報道も怖いものではなくなり、「特別なことをする必要は何もない」という勝間さんの指摘は、とても心強く感じました。

2. 体力づくりは人生の重要課題

体力づくりの大切さについては私も分かっていたつもりでしたが、勝間さんの次の言葉にとても共感しました。

「お金であれば貯蓄でき、最悪の場合には借金もできますが、体力は貯めることも借りることもできません。老後を、お金がない状態で迎えるより、体力がない状態で迎えるほうがよっぽど不安です。」(274ページ)

私は、体力がない状態で老後を迎えたくないので、今から体力づくりに励もうと思いました。

3. 裁量権を広げて、仕事のやりがいを増やす

「やらされ仕事」が多いと嫌になってしまうので、自分の裁量権を増やす努力を中長期的に続けるとよいと勝間さんは述べています(228ページ)。そして具体的な方法として、①毎日数分でも、少しずつ自分の裁量権を広げる意識を持つ、②裁量権が大きい上司の仕事を率先して引き受けて、確実に実行し、上層部からの信頼度を高める、③会社や社会の仕組みに頼ってばかりいないで、ダメもとでも、自分で仕事をデザインするようにし、そのために周囲の交渉も諦めずに行う、という3つをあげています。この3つを心がけると1年後、2年後には驚くほど仕事がしやすくなると勝間さんは述べています。


 その他、勝間さんは「世の中は序列付けで動いている」と述べており(199ページ)、とても興味いと思いました。会社、学校、家庭など、自分が所属するグループの中にどのような序列があって、自分は何番目に属しているのかを察知して、振る舞い方を決めているということです。上司のパワハラや家庭内DVに逆らえないのは序列付けがあるからで、それを変えるためには、勇気をもって自分が動く必要があると勝間さんは述べています。「なるほど」と思いました。


 また、「妬む」「怒る」「愚痴る」の三毒を追放すると味方が増える(147ページ)、そして「実践と検証をしながら最適解を見つける」(105ページ)など、本書には勝間さんの人生観や人間関係のノウハウなどがぎっしりと詰め込まれています。とても読み応えのある本ですので、是非オススメします。

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