寝る前15分を活用:スマホ時代に問われるアナログ記憶術

樺沢紫苑 著『覚えない記憶術』
(サンマーク出版、2016年)

 記憶力があまりいいほうではありません。そして、加齢とともに記憶力の衰えを感じています。というか、覚えることが嫌いになってきた感覚があります。これを何とかしたいと思い、本書を読んでみました。
 本書の著者、樺沢紫苑さんは精神科医で、YouTubeでいろいろな質問に答える短い動画もたくさん発信されています。『アウトプット大全』などのビジネス書も書かれています。
 本書を読んで私が特に勉強になったの4点です。

1. 全体像を俯瞰すると記憶しやすい

 本の全体の構成を把握してから、細部を読んで深めていく。この読み方を樺沢さんは「富士山記憶術」と呼んでいます(96ページ)。富士山に登るとき、どこが険しくて、どこが緩やかなのか、周りに木が生えているのか、見晴らしがいいのか、足元は小石なのか、砂なのか、といったコース全体の様子が分かっていると登山が楽になるということを、読書に応用して要点の記憶に役立てるものです。
 全体像の把握のために重要になるのが「目次」です。「目次」から、その本の構成やキーワードが予想できます。

2. 単語カードを使ってレベル分けせよ

 本書を読んで最も重要だと思ったのが単語カードの活用です。単語カードは受験勉強のときには使っていましたが、今はやらなくなってしまいました。
 樺沢さん自身がウイスキー検定を受検したときに単語帳を使って勉強されたそうです。そのやり方がちょっと独特で、覚えたものを「暗記済」の束に移しながら、「暗記中」のカードを減らしていくのだそうです(114ページ)。これは覚えていないものを記憶するのに時間をかける「レベル分け記憶術」と樺沢さんは呼んでいます。
 社会人でも、いろいろな検定試験を受けることがあると思います。私もさっそく、何十年ぶりかの単語カードをアマゾンで注文しました。

3.「寝る前」15分の暗記チェックがポイント

 「寝る前」15分が記憶のゴールデンタイムと樺沢さんは述べています(122ページ)。この時間に、今日の勉強で覚えようとしたことをチェックするのが効率的だということです。
 寝る直前に映画を観たり、ゲームをしたり、というのは暗記しようとしたことと、寝る直前の映画やゲームとが「記憶の衝突」を起こして、記憶の定着が妨害されるそうです。気をつけなければ、と思いました。

4.「記録」すると「記憶」がよみがえりやすい

 樺沢さんは、ノート、メモ帳、さらにはネット上のSNSへの記事投稿によって気づきや感想を「記録」すると「記憶」に残りやすいと述べています(180ページ)。
 従来の「記憶」は「脳内記憶」オンリー。これからは「記憶」を「外化」して、「脳内記憶」と組み合わせる。この「外化」のメリットは、自分を客観的に把握できたり、自分の考えを物理的に保管・保存できたりするといったことがあります。また、SNSへの投稿であれば他者との交流やフィードバックの機会にもなります(182ページ)。
 本書のタイトルは『覚えない記憶術』です。本書には、単語カードを使った記憶術が解説されており、「暗記で対処すべきものはしっかり暗記する」ということも重視されています。しかし、脳以外の外部記憶装置に「記録」することによって、必要に応じて「記憶」を簡単に呼び起こす方法も重視されています。インターネットというツールが当たり前になった時代には、こういう「記憶」の戦略も重要になるのではないかと私は感じました。

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