災害時に食べ物を「何とかする」工夫

今泉マユ子 著『災害食がわかる本』
(理論社、2019年)

テレビ出演も豊富な著者

 以前、クックパッド監修の『防災レシピBOOK』を読んだことがあり、いざという時の備えの大切さを知ることができました。また、災害の時に手に入る材料で食べ物を「何とかする」工夫がいろいろあることが分かりましたので、今回は別の本から災害時の知恵や工夫の仕方を知りたいと思い本書を読んでみました。
 本書の著者、今泉マユ子さんは管理栄養士・防災士の資格をもつ方で、大手企業の社員食堂、病院、保育園に勤務した経験があるほか、NHK「あさイチ」「おはよう日本」、TBS「マツコの知らない世界」などのテレビ出演も豊富な方です。

災害食には野菜が不足しがち

 本書を読んで、まず感心したのは2011年の東日本大震災のときの被災者の声から「野菜がほしかった」「幼児に飲ませる牛乳がない」「手に入るものでなにを作るか」「水を使いまわして節約」などのエピソードが紹介されている点です(32ページ)。何日も野菜を食べることができず、肌が荒れたり、手足に「あかぎれ」ができたりして痛かったという声などが紹介されています。

災害食は進化している

 それから、最近の「災害食」の豊富なバリエーションが写真付きで紹介されている点も目を引きました。昔からあるカンパンはもちろんですが、フリーズドライのご飯、即席の卵スープ、パンの缶詰、温めずに食べられるレトルトカレー、そして宇宙食のおにぎりなども災害食として注目されているようです(34ページ)。国際宇宙ステーションで実際に食べられている「宇宙おにぎり」「たこやき」「スペースアイスクリーム」には興味をそそられました(38ページ)。「スペースアイスクリームいちご」はアマゾンで買えるみたいですし、「宇宙食詰め合わせ」というのもアマゾンにありました。値段も「手が届かない」ほどではないと思いましたが、興味のある方は検索してみてはいかがでしょうか。

アレルギー対応食、高齢者向けも

 また、アレルギー対応食や、高齢者にも食べやすいお粥(かゆ)のレトルトもあり(37ページ)、こういうのも大事だなと再認識しました。
 さらに、本書ではお菓子やフルーツも大事ということが書かれていて「なるほど」と思いました。果物の缶詰やドライフルーツがあるとビタミン、ミネラル、食物繊維を補給でき体調をととのえるのに役立ちますし、ちょっとした気分転換になるということも書かれていました(61ページ)。チョコレートやビスケット、ナッツ類、ドライフルーツなどは日持ちがするので、ふだんのものをそのまま災害食に活用できるということを知りました。

「ローリングストック」にお菓子やフルーツも!


 クックパッド監修『防災レシピBOOK』にも本書にも「ローリングストック」が災害への備えとして大事だと書いてありました。「ローリングストック」とは、よく使う食材をある程度買い置きし、賞味期限の近いものからふだんの食事に取り入れて消費する方法です。この「ローリングストック」の中にお菓子やフルーツも入れておくという発想が今まであまりなかったので、徐々にやっていこうかと思いました。
 本書は、災害への備えを楽しんでできるような工夫が多く紹介されていると思いました。是非おススメします。

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