「一軍」「二軍」ノート術でアウトプットは倍増するか?

佐藤ねじ 著『超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方』 
(日経BPマーケティング、2016年)

 ノートの使い方は誰からも教わったことがなく、完全に自己流です。罫線の入っていない無地のダブルリングノートに書きなぐっていますが、これで良いのかというのは気になっていました。ノートの活用法について改善できる点があればいいなと思って本書を読んでみました。
 

 本書の著者、佐藤ねじさんはデジタルコンテンツの企画・デザインをするアートディレクターをされています。文化庁のメディア芸術祭などでも受賞経験があるそうです。
佐藤さんのお仕事の中軸となるのは、面白いコンテンツの企画をたくさん生み出すことです。本書で述べられていますが、今の時代、ネット上のデジタルコンテンツは毎日大量に生産され消費されています。そのためSNSなどで話題になって「バズる」ようなコンテンツ企画を出していくのが死活問題です(2ページ)。
 そこで佐藤さんが工夫しているのがノートの使い方です。本書を読んで私が勉強になったのは主に以下の4点です。

1. 「一軍ノート」「二軍ノート」

 これまで私はやったことがなかったのですが、佐藤さんは選りすぐりのネタを集める「1軍ノート」を作っているそうです(21ページ)。毎日コツコツと気になったことをメモするのは「二軍ノート」ですが、アイデアを選別して「一軍ノート」に書き写す作業をすることがコンテンツ企画を出すうえでとても役立っているそうです。有名な外山滋比古さんの『思考の整理学』でも、選りすぐりのアイデアを集めるという方法は提唱されています。外山さんは、これを「メタ・ノート」と呼んでいたそうですが、佐藤さんの「一軍ノート」という呼び名のほうが、アイデアを選別するイメージがわきやすくていいなと思いました。

2. 朝メモ

 佐藤さんは、毎朝出勤前にカフェでコーヒーを飲みながら、ノートを広げてあれこれとメモすることを習慣にしていれ、これを「朝メモ」と呼んでいるそうです(65ページ)。書く内容は、前日の出来事、最近の悩み、少し前に観た映画の感想、今後の目標、引っ越しの手続きのことなど雑多だそうです。仕事に関係があるわけではない「頭のデトックス」という意味が強いそうです。日記のような意味もあるのではないかと思いました。また、「二軍ノート」には、このような何でもメモするスタイルで書くのが佐藤さん流だと感じました。

3. アイデアを膨らませる「要素分解」

 佐藤さんはノートを使ってアイデアを膨らませるのですが、そのやり方には「要素分解」という工夫があることが分かって勉強になりました。佐藤さんは、オーストラリアに「事故車のショールーム」ができたというニュースを聞いて「ショールーム」とは新車が並んでいるものという人々の思い込みの逆を行く面白さを感じたそうです。これを例に、佐藤さんの「要素分解」という方法が本書で解説されていました。それは「ショールーム」という言葉から連想されるもの、「事故車」あるいは「欠損」という言葉から連想されるものを書き出していきます。その際、ノートに「ショールーム」と書き、その周りに8つぐらいの空欄を書いて、それを埋めていくという「マンダラート」という方法が紹介されていました(136ページ)。「マンダラート」は3×3のマスを用意して、中央に単語を入れ、それから連想できるものを周りの8マスにいれていくことで発想を広げる方法です。
もう1つ、佐藤さんは「要素分解」したものを組み合わせるというコツを紹介してくれていました(145ページ)。先ほどの「事故車のショールーム」を「要素分解」したうえで組み合わせたものとして「iPhone画面の美しいひび割れ選手権」というアイデアを佐藤さんは提出されていました(138ページ)。これは一種のパクリかもしれませんが、表層のパクリではなく「本質のパクリ」だと佐藤さんは言っておられます。何もないところからはアイデアは浮かばないと聞くことがありますが、佐藤さんのような「要素分解」の発想法があるのを知ることができて、とても勉強になりました。

4. アウトプットのハードルを下げる

 佐藤さんは、アウトプットのハードルを下げて、自分が面白いと思うもの、興味のあるものを披露することを推奨しています(95ページ)。アウトプットを「自分の仕事の成果物」だけに限定せず、個人的なブログやSNS、雑談などをアウトプットの場だと考えて、人の2倍アウトプットすれば、2倍のフィードバックが得られて、そのなかから自分らしい表現がつかめてくるということです(185ページ)。アウトプットが少ないと、クオリティも上がっていかないので、たくさんアウトプットすることが大事だと思いました。


 本書を読んで、日頃からどんどんノートに書き出していって、そのなかから「一軍ノート」に格上げできるものを選んでいくという方法がとても大事だと思いました。私の場合は、日頃からの「二軍ノート」の代わりに手帳の余白を使って、「これは」と思うものを「一軍ノート」に整理するというふうにやってみたいと思いました。

Follow me!