「ミッション」を意識することのメリット

井上裕之・他 著『仕事の教科書』
(徳間書店、2019年)

 仕事で大きな成果をあげている人たちがどのようなことに気をつけているのか、ということに興味があります。本書『仕事の教科書』には、ビジネスの世界で有名な著者11人が仕事上の秘訣を公開してくれた本です。内容が盛りだくさんなので章ごとにレビューしていきたいと思います。
今回は、本書に集録されている記事から井上裕之さんの「夢・目標を実現し、最高の人生を送る方法」です。
 井上裕之さんは歯科医師であるとともに経営学博士の学位をもち、病院の経営やメンタルセラピストとしての活動、多くの著作も出版されています。
 井上さんはまず歯科医師としての初期に「世界で一番有名、かつスタンダードなインプラントの治療を最低1000本以上行うこと。それも自分の臨床評価も含め、自分が持っている本質的な知識や技術の原則に基づいてトライしてみる。それで、しっかりできるかを見極めた上で、手を広げていく」という姿勢で取り組んだと述べています(95ページ)。新しいことに次々と手を広げるのではなく、本当に必要な情報や技術をしっかり身につけることにこだわっておられたのだなと感心しました。
 本章「夢・目標を実現し、最高の人生を送る方法」を読んで私が特に注目したのは以下の4点です。

1. 自己実現を果たすには「ミッション」が必要

 井上さんは自分の歯科医院を最高の病院にしたいと考えて、経営についても学び始め、39歳の頃、ピーター・ドラッカーの経営学に出合いました。井上さんがドラッカーから学んだことの1つに「ミッション」の大切さというものがあります。「ミッション」とは「自分はなんのために生きているのか」の答えで、「自分の価値・目的」です。
 「ミッション」を意識することのメリットは、①人を正しい行動に従わせてくれること、②人材が集まるようになること、③一流の人との共通言語を獲得できることをあげています(103~105ページ)。組織の「ミッション」だけでなく個人の「ミッション」も大事だということに気づきました。

2. 21日間プログラムで習慣化する

 井上さんは、21日間で習慣が定着すると述べています(120ページ)。何か成し遂げたいことがある場合、21日間やってみて小さな成功体験を積み上げていくことで潜在意識が活性化されるということです。
 井上さんは「習慣化」と「潜在意識の活性化」をほぼ同じ意味で使っているように思いました。そして、「言葉を磨くこと」や「イメージすること」、「上質な質問をすること」ということも合わせて、良いものを引き寄せながら小さな成功体験と自信をつけることの大切さを強調しておられます。習慣が身につく期間が21日間なのかどうか、私は今まで試したことはありませんでしたが、しかし、10日であっても1カ月であっても、よい習慣が身につくのであれば、これに越したことはないと思います。さしあたり21日間(3週間)やってみるというのは大事ではないかと感じました。

3. 夢・目標は仕事、お金、人間関係、健康のバランスを意識せよ

 井上さんは、仕事、お金、人間関係、健康のバランスが整っているとモチベーションが落ちることがないと述べています(123ページ)。「何かに突出するためには、ひとつふたつできないことがあっても仕方ない。失うものがあって当然だ」という考え方もありますが、その場合であっても上記の4つは損なってはいけないというのが井上さんの考えです。これにはとても共感しました。

4. 目標達成のためにPDCAを活用せよ

 井上さんのお話の中にPDCAサイクルの活用が出てきました(128ページ)。このPDCAサイクルは誰でも聞いたことがあるもので、あまり目新しさはないのですが、目標に向かって行動していくときに、PDCAがどのくらい意識されているのかと考えると私もあまり意識していなかったと気づきました。特にCの部分、Checkで、自分と向き合って確認し、追加の勉強や、周りの見識ある人に相談することなど、Cの部分が重要だと思いました。これは最近では「フィードバック」という言葉に置き換えられつつあるようにも思いました。

 井上さんの章を読んで、「ミッション」、バランスのとれた目標、習慣化、PDCAの重要性が分かりました。取り入れていこうと思いました。

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