読みやすい文章にする“仕込み”と“さわり”とは?

小泉十三 著『「頭がいい人」と言われる 文章の書き方』
(夢の設計社、2020年)

 これまでにレポートの書き方について苅谷剛彦/石澤麻子 著『教え学ぶ技術――問いをいかに編集するのか』や小熊英二 著『基礎から分かる論文の書き方』を読み、自分の思いや考えを伝えるエッセイの書き方について中谷彰宏 著『1秒で刺さる書き方』などの本を読んできました。今回は文章全般についての書き方のコツを学ぶために小泉十三さんの『「頭がいい人」と言われる 文章の書き方』を読んでみました。

 本書の著者、小泉十三さんは出版社に勤務の後、文筆活動に入り、『頭がいい人の習慣術』というベストセラー本を書かれた方です。本書『「頭がいい人」と言われる 文章の書き方』は2005年に出版された同タイトルの新装版です。
 本書を読んだ感想としては、出版社で仕事をされていただけあって、文章術のプロ中のプロという印象を強く受けました。特に以下の4点がとても勉強になりました。

1. 書く前の“仕込み”にこだわる

 本書の第1章で述べられていた、「書き始める前の“仕込み”が大切」という指摘が大事だと思いました。その“仕込み”とは、「テーマを具体的に語る」「副題をつけると“切り口”がみつかる」という書き手の心構えや「書くための材料はたっぷり集めて精選する」「資料は、すぐに見られるようにしておく」という資料論などがあり、文章の準備段階の大切さを痛感しました。

2. 読みやすい文章にする工夫

 本書の第4章には、読みやすい文章にする具体的な方法が解説されていて勉強になりました。中でも、「1つの段落では内容を1つだけに絞る」(94ページ)というのがとても重要だと思いました。1つの段落にいくつもの内容が入っていると、読者には何の話なのか分かりにくくなるということを肝に銘じておきたいと思いました。書く時には、内容をよく整理して1つのことを1段落に書くという原則を意識しておきたいと思いました。
 また、「段落の最初に“さわり”を見せる」(96ページ)ことの大切さも述べられていました。これはテレビドラマのオープニングテーマが流れるときに、物語の“さわり”が展開されているという例も示されていて、「なるほど」と思いました。“さわり”によってドラマの視聴者は、ある程度、予測しながらドラマを観ることができるようになります。文章も実はこれと同様に、ある程度の「あらまし」や結論を最初に示すほうが読みやすくなるということ。これは本当に大事だと思いました。

3. 3割長く書いて「刈り込む」というテクニック

 文書を一旦書いた後、仕上げのチェックポイントとして、小泉さんは「推敲とは削ること」だと述べています(184ページ)。それは文章の「ムダな贅肉(ぜいにく)をとること」だと言い換えています。つい「削る」ことを「モッタイナイ」と考えてしまいそうですが、3割程度も削ると良いというのは、今まで考えたことがありませんでした。

4. 文章力は日々の習慣から鍛えられる

 本書では、日々の生活の中で文章力を鍛える方法が解説されており、特に日記が良いと述べておられます(207ページ)。日記を書くメリットは、樺沢紫苑さんの『精神科医が見つけた3つの幸福』でも指摘されており、樺沢さんの場合は「その日あったいいことを日記に書いて幸せを収集する能力を高める」というように述べられていますが、小泉さんは文章を書く機会を増やすために日記を書くとよい、そして、「テーマを決めて日記を書く」とふつうの日記よりも内容が濃くなって取り組みやすいと述べています(209ページ)。


 そのほか、「文章を書くことは、いろいろな事柄を整理し、論理的につないでいく作業である」(206ページ)という本書の指摘も重要だと思いました。話の流れや論理の流れを整理するためには「フローチャート化」すると良いということですが、これなどもやってみたいと思いました。

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