ちょっと不思議な校則もあるようです!

二宮皓 著『こんなに厳しい!世界の校則』
(メディアファクトリー、2011年)

 1980年代に中学生、高校生でした。持ち物、服装、頭髪の検査が厳しい時代でした。「ツッパリ」文化が流行してましたので、学校の制服を「改造」したり、勉学に関係のない物を学校に持って行ったりということが多く行われていました。検査が行われて、「校則違反」ということで注されたり怒られたりしていましたので、「校則」にはいいイメージがありません。しかし、世界に目を向けると、厳しい校則やちょっと不思議な校則もあるようです。

校則って何だろう

 本書は、比較教育学を専門とする二宮晧さんが20人以上の協力者からの情報をもとに監修した本です。
 本書を読んで、「そもそも校則とは何か」について考えるよいきっかけになりました。それは学校のルールであり、生徒が守るべきルールです。「生徒規則」や「生徒心得」と呼ばれることもある。その内容は①義務事項、②禁止事項、③届け出、承認事項、④訓辞的、道徳的規範事項などである。そして、校則は懲戒(ちょうかい)と密接に関係しています(183ページ)。そういえば、高校の時、学校に無断でバイトをして停学処分になっている人がいましたが、それは③に該当するんだなと思いました。また、マンガ雑誌を学校に持って行って、友達と貸し借りしていたのは②に関係するんだなと気付きました。

「教師にあだ名をつけてはいけない」(中国)

 本書には、たくさんの国の校則が紹介され、解説されていますが、特に気になった4カ国のものをとりあげたいと思います。
 まず、中国の中学には「教師にあだ名をつけてはいけない」という校則があるそうです。中国の子どもたちは必ずと言っていいほどあだ名をつけると解説されています(32ページ)。例示されているのは次のようなあだ名です。いつも紫(むらさき)の服を着ている教師に「ナス」、授業中に教壇の前を行ったり来たりするので「振り子」、両手に腰をあてているので「茶(ちゃ)壺(つぼ)」、などです。ネーミングセンスがなかなかいいと思いました。「ナス」や「茶壺」と呼ばれる教師の姿を思い浮かべてしまいました。

「直立、お辞儀、胸に両手」(タイ)

 次に、タイの中学の校則には「先生が近くを通ったら、直立、お辞儀、または胸に両手を合わせて尊敬の意を表すること」と書かれているそうです。日本の学校の場合、教師に対してとるべき態度を校則に定めているものは少ないと思います。タイの教育は、仏教と強く結びついていて、「徳と知識を充分に備えた教師に対して、礼儀正しく、尊敬の心をもって接することこそが、知識と善行に至る道である」ということを確認する意味の校則だと解説されています(22ページ)。

「罰として社会奉仕」(韓国)

 続いて韓国です。ある高校の校則には「懲戒処分になる前に、まず学校内で5日間、社会奉仕活動をしなければならない」というものがあるそうです。停学などの懲戒処分は生徒の精神的ダメージが大きいので、懲戒処分の前段階として「5日間の社会奉仕活動」をクッションとして生徒の更生を図るという考え方だということです(52ページ)。社会奉仕活動の内容は、福祉施設や公共施設の手伝い、老人ホームや障害者施設への慰問、交通安全や献血キャンペーン、自然保護活動などです。日本で、このような社会奉仕活動が学校のペナルティとして行われたというのは、私は聞いたことがないのですが、なかなか興味深いように思いました。

「カンニングはむち打ち」(シンガポール)

 最後に紹介するのはシンガポールの中学の校則です。「テストでカンニングすると、男子はむち打ち、女子は4日間の謹慎とする」。テストでのカンニングはいけない行為ですが、その対応として「むち打ち」というのはどうでしょうか。また、男女で対応に違いがもうけられていることもどうなのでしょうか。解説には、「むち打ち」はイギリス植民地時代に体罰として認められたもので、今も司法による刑罰や軍隊内の指導などで広く利用されているとのことです(102ページ)。そして、「校長ハンドブック」に体罰の方法が細かく規定されており、「対象は男子のみ」、「行う教員意外に別の教員が証人として立ち会う」、「打つ箇所は手のひらまたは臀部(でんぶ)に限り、着衣または肌を覆うものの上から軽く打つ」、実施したら記録して保護者や教育省に報告することなどが定められているそうです。これには驚きました。

「喧嘩をすると公開むち打ち」(シンガポール)

 シンガポールの校則には、さらに続きがあって、校内暴力や喧嘩に対する処分として「公開むち打ち」が定められています(103ページ)。これも驚きでした。「公開むち打ち」が実際にどのように行われるのか、現場はどんな雰囲気なのか、知りたいと思いました。
 本書は、世界の学校の校則とその背景にある文化や宗教などを知ることができる興味深い本です。おススメします。

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