法律素人のための法律用語解説本!!

法制執務・法令用語研究会 著『条文の読み方(第2版)』
(有斐閣、2021年)

刑事ドラマをもっと楽しめる!?

 法律の専門家ではないので、ふだん法律の条文を読む機会はほぼありません。が、刑事もののテレビドラマなどを観ていると犯人は殺人や強盗など何らかの法を犯し、刑事も法に則(のっと)って捜査したり、犯人が法廷で裁かれたりしています。2015年にTBSで放送された連続ドラマ「下町ロケット」ではロケットもエンジンに使う部品の特許をめぐって2つの会社が双方を訴えて法廷闘争していました。特許法という法律の解釈や運用が争われていたのですが、以前から法律の条文というのは表現が硬くて何を言っているのか分かりにくいイメージでした。そんな時、新聞の広告で本書を見つけて読んでみました。

法律条文へのアクセス方法など

 本書を編集・執筆した「法制執務・法令用語研究会」とは衆議院法制局に勤務する20人の法律実務家です。初版発行(2012年)から約10年が経過しバージョンアップしたのが本書です。
 読んでみて思ったのは、本書は大学の法学部やロースクールで本格的に勉強しようとする学生には必須の基本書だということです。法律の調べ方として、政府が提供するネット上のデータベース「e-Gov法令検索」や紙媒体の有斐閣『六法全書』、法律の一部改正などについては「インターネット版官報(かんぽう)」、法律案は衆議院・参議院のホームページなど基本情報が紹介されています。(なるほど国会は立法府(りっぽうふ)であり、法律の制定について専門的に審議しているのですものね。)

法律の素人でも楽しめる!


 私のような門外漢(もんがいかん)が楽しめる要素も本書には盛り込まれています。例えば、法律の題名の長さについて。最も短いのは「民法」「刑法」など2字です。では、1番題名の長い法律は何字でしょうか?
正解はなんと110字です(30ページ)。それは「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく………の特例に関する法律」だそうです。興味のある方は実際に上記「e-Gov法令検索」にアクセスして実際に条文を見てみることをおススメします。

法律用語の微妙な使い分け


 本書で最も勉強になったのは以下のような法律用語の微妙な使い分けについての解説です。


①「係(かか)る」と「関(かん)する」
 「介護休業申出に係る対象家族」のように、「係る」は2つの語句を直接的に強く結びつける場合に用いる。これに対し、「関する」は「フロン類の適正化に関する指針」のように、「係る」より緩やかで、やや広い範囲での結びつきを表すとされています(99ページ)。

②「とき」と「時」
 「他人の材料の価格を超えるときに限り」や「最終の行為が終わった時から」のように「とき」は必ずしも時間的概念としての意味がないのに対し、漢字の「時」はある時点を瞬間的にとらえて押さえる場合に用いる(108ページ)。

③「速(すみ)やかに」「遅滞(ちたい)なく」「直ちに」
 これら3つを時間的即時性(そくじせい)が強い順に並べなさいと問われたら、あなたはどう答えますか?
正解は、「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の順になります(115ページ)。日本語の奥の深さを実感してしまいます。

少し身近に感じる

 本書を読むと複雑で難解なイメージのある法律の条文が、一定の「作法」にもとづいて作成されているという事情を知ることができ、少し身近に感じることができます。もちろん、それぞれの法律の内容については基本書や法令解説を読んで勉強を深める必要がありますが、その場合にも本書に書かれている内容は基礎知識として役立つと思います。

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