(レジリエンス)「運動 or 呼吸 or 音楽 or 筆記」+感謝+鳥の目

久世浩司 著『「レジリエンス」の鍛え方』
(実業之日本社、2014年)

 「レジリエンス」とは「弾力性」というような意味で、バネが元の形に戻る力をもっているように、「回復力」でもあります。そこから転じて、「逆境から立ち直る力」という意味にもなります。近年では「レジリエンス」というカタカナで心理学用語として定着しています。
 学校生活での受験勉強や部活動などでは逆境は付き物でしょうし、職業生活、家庭生活でも逆境からどのように立ち直るのか。その方法を学びたいと思い、本書を読んでみました。オーディブルで聴きました。
 以前の日本ならば、「ガッツ」やら「根性」とかで苦境を乗り越えるというのが美談だったのかもしれません。しかし、本書を読んで分かったのは、「レジリエンス」という考え方は、「根性」ではなく、もっと合理的な乗り越え方が探究されてるのだな、ということです。
 本書では、「不安」「恐れ」「怒り」「憂鬱」などのネガティブ感情を感じたときの基本的対処法として4つの方法が示されていて、これがとても参考になりました。その4つとは①運動系、②呼吸系、③音楽系、④筆記系、の4つです。これらはすぐに生活に取り入れることができます。私の場合①運動、②筆記、はよく行っています。嫌な気分を感じたときに、少し長めのウォーキングをすると、気分が良くなることを何度も経験してきました。また、④筆記として、日記を書いていますが、その日のことに整理をつけて次の日に向かうセレモニーのように活用しています。本書では、「書く」ということが没頭することを促す動作なのがよいと書かれていました。
 「書く」ことが没頭につながらず、苦手意識があるという人は、例えば③呼吸を工夫するのがいいかもしれないと思いました。簡単なのは深呼吸です。本格的なのはヨガなどもあると思いますが、深呼吸はすぐにでも生活に取り入れることができます。怒りを感じたときには、呼吸が浅くなっている、という特徴があるようです。
 また、③音楽を聴くというのも、簡単にできることです。1日のどこかのタイミングで音楽を聴くことでネガティブ感情から回復するというのは、よい方法だと思います。
 次に「感謝」というポジティブ感情に注目します。親切をされたときに感じる「感謝」の念や、幸運な出来事に対して神さまやお天道様に感謝することなどは、自分だけでなく周囲の人との関係を良くすることにつながります。本書では、このようなポジティブ感情の高まりを「レジリエンス」の基礎だと捉えており、私はとても面白いと思いました。
 また、「やればできる」という感情、つまり「自己効力感」は基本的には実体験から生じるものですが、親やメンターのような「お手本」になるような人から話を聞く「代理体験」や他者からの励ましによっても生じると紹介されていました。「レジリエンス」は自分だけでなく、他者の支えも重要だということです。
 最後に重要だと思ったのは、痛い体験をした場合、人は痛みに感情が集中して、視野が狭くなってしまいがちだという点です。痛い体験をしたときにこそ、視野を広く、高い位置から俯瞰することが回復の秘訣になります。つまり、この俯瞰できる力も「レジリエンス」の内容だということです。痛い体験をしている人がいたら、周囲の人は、その人は俯瞰できるようにサポートしてあげることが大切だと思いました。
 「レジリエンス」は最近、よく聞く言葉ですが、その内容をもう少し深く知るには本書はとても参考になりました。そして、学校生活、家庭生活、職業生活を乗り切っていくには「レジリエンス」の方法を学んだほうがよいと思いました。

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